Addiction(46)
10月に入ってから、なんだかちょっと忙しくなっていた。
いわゆる『ブライダルシーズン』というやつで、そっち需要が増えてるからだ。
で、先週の終わりくらいから『なんだか』が『本当に』忙しくなってきた。
家に帰った途端、もうちょっと眠くて限界という日が続いていた。
この日もそうで、風呂から出てほとんどお決まりのコースというように、布団を敷いてそのままコテンと寝ようとしたところ。
ふいに三蔵が立ちあがって、玄関の方に向かった。
「さんぞ?」
戸締りはしたはずだよな、と眠い頭で考える。
が。
「ちょっと出てくる」
そう言われて、びっくりして飛び起きた。
一瞬で目が覚める。
こんな時間から出かけるなんて、なにかあったのだろうか。
なんだろ。
胸騒ぎがする。
すごく。
思わず飛び起きた勢いのまま、今まさに外に出ようとしている三蔵のそばに走り寄っていった。
「三蔵っ」
呼びかけた声が自分でも切羽詰まったかのように聞こえた。
三蔵が驚いたかのような表情で振り返る。
「……あ、ごめん」
それでなんか我に返る。
なんでこんな――浮き足だったような感じになっているのだろう。
自分がひどく情けない顔をしているのが感じられる。
こんなのは変だ――と思っていたところ。
「すぐ戻ってくる」
手を引かれ、ふわりと抱きしめられ、そう言われた。
束の間、その温かさに身を委ねる。
何ら変わることなく、日々は過ぎていってるけど。
どうしてだか――周囲がザワザワと落ち着かない感じがしていた。
何がある、というわけではない。
それを言ったら、何もない、と言った方が良い。
ただ――。
それは言い知れぬ不安。
パタン、と閉まった扉をしばらくずっと見つめ続けた。