Addiction(47)


バイトから帰ってきて、扉を開けようとしたところ。

「わっ」

内側からドアが開いて、出てこようとした三蔵とぶつかりそうになる。
バランスを崩したところを受け止められた。

「ごめん」

三蔵の腕に掴まって体勢を立て直す。

「いや、大丈夫か?」
「うん」

そう答えると、しげしげと三蔵に見られた。

なんだろ?
そう思って見つめ返すが、特に三蔵からの言葉はない。

「出かけるの?」

不思議に思いつつも、どこかに出かけるみたいだったので、そう聞いてみた。

なんだか最近、三蔵がこうやって出たり入ったりすることが多くなった。
前までは家にいるか、教会にいるかどちらかだったのに。

それはなんだか――よくわからないけど、不安めいた気分になる。

「あぁ。しばらく出かけてくる」

ぽん、と軽く頭を叩かれて、三蔵が横を通り抜けていく。
それはなんということのない仕草だったのだけど。

「……三蔵っ!」

なぜだろう。
よくわからないけど。
不意になんだか嫌な予感のようなものを覚えた。

前々から感じている漠然とした不安ではなく、もっと強い予兆めいたもの。
このまま――会えなくなってしまうかのような。

反射的に三蔵の姿を追って振り返った。手を伸ばして、服の袖口を掴む。

「どうした?」

三蔵が足をとめて、こちらを見た。

それはまったくいつもの、普通の感じで。
訝しげな表情を見ているうちに、先ほどの予感みたいなものが、なんだか嘘みたいに思えてくる。

本当にそんな予感なんてしたんだろうか。

「あ、えーっと……しばらくっていつまで?」

で、取っ手をつけたような質問をする。

だけど。
一瞬、三蔵の顔に困ったような表情が浮かんだ。

胸が、ふたたび騒ぎ出す。

「帰ってくるよね? 三蔵、ちゃんと、帰ってくるよね?」

ほとんど考えもなしに言葉を紡ぎだした。

すると、ふいに。
袖を掴んでいないほうの手があがり、頭に置かれた。

くしゃりとかき回され、それから頭を押されるようにして、三蔵の方に引き寄せられる。
ふわりと抱きしめられた。

「やっぱり血をもらってからでいいか? 出かけるのは朝にする」

耳元で聞く三蔵の声には、久し振りに穏やかさのようなものが感じられた。