Addiction(48)
遠ざかる温もりに、無意識のうちに身を寄せた。
ふっと、頭の上に暖かな息がかかり、もう一度温もりに包まれる。
安心して身をまかせた。
と、額の髪をさらりとかきあげられ、そこに柔らかな感触が降ってきた。
「……んぞ?」
ふわりと意識が浮上する。
「悪い、起こしたか」
静かな囁き声が聞こえる。
「朝まではまだある。寝てろ」
ゆっくりと眠りを促すかのように背中を撫でられる。
もう一度、眠りの淵に誘われる。
だけど。
落ちていこうとする意識を、慌てて呼び戻した。
手を伸ばして、三蔵の背中に回す。
そうして、無言で、ぎゅっと抱きついた。
「どうした?」
三蔵の手が止まる。
きっと訝しげな顔でこちらを見ている。
そうは思ったけど、顔をあげて確認することはできない。
だって、この手を離したら――どこかに行ってしまう。
と、ふっと三蔵が息を吐き出したのがわかった。
ため息だろうか。
呆れられたのだろうか。
でも。
やっぱり手は離せない。
それどころか、ますますしがみついてしまう。
呆れられてもいい。
それでも――。
すると、そっと両手で頬を包まれた。
そして強制的に顔をあげさせられた。
辺りは暗闇に包まれている。
でもこのくらいの距離なら、ちゃんと見える。
呆れた顔をしてるかも、と思った三蔵の表情は、そうではなくて。
全然、そうではなくて。
いつになく優しい表情を浮かべていた。
そして。
「ちゃんと帰ってくる」
囁かれた言葉は決して大きくはなかったけど、耳にはっきりと聞こえた。
「朝まではここにいるから、安心して寝ろ」
そしてまた抱きこまれる。
ゆっくりと、背中を撫でる手の動きが再開される。
身を委ねながらも、でも。
きっと、眠れない――。
朝なんて、来なければいい。
本気でそう願った。