Addiction(57)


ふわふわと夢のなかを漂っているような感じ。
とても気持ちいい。

「悟空」

と、耳に心地良い声まで聞こえてきた。

「悟空」

深みのある低い声。

――大好き。

そう思い、そして。
ふわりと押し上げられるように意識が浮かびあがった。

「……さんぞ?」

目の前に綺麗な顔。思わず、ほわほわと笑う。
と。

「寝ぼけてるな、お前」

ちょっと呆れたような声がした。

「今日もバイトがあるって言ってなかったか? 大丈夫なのか?」

一瞬の間の後。

「うわっ」

言われたことをようやく理解して飛び起きた。

目覚ましっ。

時間を見てびっくりする。

あー、もう、かけるのを忘れてたかもっ。

バタバタと用意に走る。

「お前、働きすぎじゃないのか?」

珍しく心配そうに三蔵が声をかけてくる。

まぁ、さすがにそれもそうかも、なんだけど。
もうどのくらい休みナシで働いているのか。

「でも、風邪ひいちゃった人がいるから、どうしても……」

休めないんだ、と言おうとしたところで、携帯が鳴った。
出ると、店長からだった。

「……あ、はい。わかりました」

パチン、と携帯を折り畳む。
なんか力が抜けて、座りこんでしまう。

「どうした?」
「今日、休んでいいって。なんかね、店長の友達が手伝ってくれることになったって」

良かった、って思う。
この時期、結構体力勝負って感じだから、ちょっとさすがに疲れが溜まってきていた。

「そうか」

と、ふわりと三蔵に抱きしめられた。
なんかあったかくて、ほわほわする――と思っていたところ。

「ちょ……っ、三蔵、なにして……っ」

三蔵の唇が首筋を辿っていく。

「今日は休みなんだろ?」

低い――艶のある声が響く。

「だけど、まだ朝――っ」

思わずあがってしまいそうな吐息を噛み殺す。

「このところずっとお預けを食らわされていたんだぞ? 朝も夜も関係あるか」
「なに……っ、それっ」

確かに疲れているから……って言ってきたけど。

「さ、んぞっ」

肌のうえを這っていく唇に――意識を浸食されていってしまう。
そして――。