炬燵でアイス


正月明けの商店街は思っていたよりも人で賑わっていた。
といっても、まだ正月気分は抜けきっていないようで、道行く人たちはどこかのんびりした雰囲気を漂わせていた。
が、それでも、小さな子供を連れて歩くには、それなりに気を遣う。

「こら、悟空、余所見をしているとはぐれるぞ」

きょろきょろと辺りを見回す小さな子供に声をかける。
手を差し出すと、途端に満面の笑みを浮かべて、しがみついてきた。

「さんぞーとおでかけ、うれしい」

このまま歌い出してしまうかのように、声が弾んでいる。

「ちゃんと前見て歩けよ。転ぶぞ」

なにか楽しいのか、こちらを見上げるにこにこした顔に注意を与える。

「へいき。ころんでも、さんぞといっしょならいたくない」
「……なわけねぇだろ」

小さな子供がそうであるように、悟空もよく転ぶ。
転んだからといって大泣きをするようなことはないが、痛いことに変わりはない。
怪我をすると、すっとんでくる。
まぁ、それは甘えたいからかもしれないが。

「さんぞ、あいしゅ」

そんなことを考えていたら、悟空が話しかけてきた。

「あ?」

考え事をしていたため、いっていることがイマイチつかめない。

「あいしゅ。あいしゅ、買って」
「アイス?」

聞き返すと、こくこくと首が縦に振れた。

「お前、この寒いのにアイスなんか食えねぇだろうが」
「くえるー。おうち、おこた、ぬっくぬくー」

確かに部屋の中は暖かいかもしれないが。

「食ったら寒くなるぞ」
「へいき、だもん」

ぷう、と頬が膨らむ。
その『へいき』という根拠がどこにあるのか聞いてみたいものだが。

「……小さいの、ひとつだけだぞ」

そう答えると、ぱぁっと顔が明るくなった。

「うん! ありがとー」

正直、甘いと思う。
が、とても嬉しそうな笑顔に、たまには良いかと思いなおした。