遊園地〜エントランス


平日、しかも混雑を避けて開園から少ししてから入ったのだが。


「うわ……」

「すげぇ人。どっから湧いてきたんだ」


隣で驚く二人とほぼ同様の感想を抱き、三蔵は早くもここに来たことを後悔した。

ここは、某有名な遊園施設。

入口、どころか、駅を降りたときから人がたくさんいると思っていたのだが、店が立ち並ぶ通りを抜けて、広い空間に出た途端、辺りは人、人、人。
それを見ただけで早くもどっと疲労感を覚える。
と。


「くーさんっ!」


足元ではしゃぐ声と、駆け出して行きそうな気配。


「こら、悟空」


三蔵は手を出して悟空を掴まえると、抱きあげた。


「人が多いんだから、勝手にウロチョロするな。迷子になるぞ」

「ごめんなしゃい。でも、くーさん、いたんだもん」


三蔵に大人しく抱っこされた悟空が顔だけオレンジ色の着ぐるみの方にと向ける。


「悟空、あれはちょっと……違うクマさんですね」

「う?」

八戒の言葉が理解できなかったのか、悟空はきょとんとした表情を浮かべる。


「あぁ。仮装か」


視線の先を追い、悟浄が納得したかのように呟く。

「にしても、うーん。パジャマ……じゃねぇよな、あれ?」

「違うと思いますが……。ハロウィンの期間中でも今日は仮装OKの日みたいなんですけど……こんなに仮装をしてる人がいるんですね」

「へぇ、そうなのか。……お、あそこ。すげぇぞ。寒ぃのに、ドレスの肩が出てる」

「あぁ。ホント凄いですね。気合いでしょうか」

「おぉっと、またもやクマちゃん発見。本当にたくさんいるもんだな」


感心したように悟浄は言い、それから悟空の方に向き直ってその頭を撫でた。


「本物のクマちゃんは別のトコにいるから。そこに行こうな」

「うんっ」


満面の笑みに、ふと三人の表情が柔らかくなる。
地面に降ろしてやると、はしゃいだ様子でトコトコと悟空が歩いていく。
それを見守りながら。


「悟空なら、アヒルさんとか似合いそうですよね」


呟く八戒に、三蔵の眉間に皺が寄る。


「おい」

「今年はいまからでは無理ですけど、来年こそは」


なにやら拳を固めて決心を固めている八戒に、三蔵は微かに溜息をついた。