遊園地〜アトラクション2 (1)
「へぇ。劇場の内装風になってるんだな」
辺りを見回し、悟浄が呟く。
どこもかしこも人でいっぱいだったが、劇場型のこのアトラクションは、一度に大人数が入れるためか15分待ちで、小さい悟空でも楽しめそうだったので入ってみた。
なかは悟浄の言う通り、劇場のロビー風になっている。
アトラクション自体は劇場で行われるので、待ち時間に見られるように、だろう。ロビーにはガラスケースに収まって、いくつか展示物が飾られていた。
「ほら、妖精さんがいるぞ」
一生懸命上を見ようとしている悟空を悟浄は抱き上げてやる。
「妖精さん!」
悟空が嬉しそうな声をあげた。
「ごじょ、高い。すごい」
それぞれに長身だが、悟浄は三人のなかでも一番背が高い。
視界が開けて向こうまで見渡せ、悟空は顔を輝かせて悟浄を見上げる。
「そうだろ。お。あっちに魔法のランプがあるぞ」
得意そうに言って、悟浄は悟空を抱き上げたまま人混みを抜けていく。
「昔やったお芝居の展示みたいになっているんですね。それにしてもすごい金貨……あ」
展示物を興味深げに見ていた八戒が急に声をあげた。
「悟空、悟空。ここにネズミさんがいますよ」
手招きをして悟空を呼ぶ。
「……どこに?」
悟空ではなく、一緒に展示物を見ていた悟浄が聞く。
「ネズミさんそのものじゃないです。ネズミさんの形をした金貨がそこに……」
悟浄と悟空は八戒の指さす方を、ガラスケースに顔を近づけるようにしてじぃっと見つめる。
ややあって。
「いた!」
悟空がびっくりしたように目を真ん丸にして声をあげた。
「ネズミさん! いた!」
「え? どこだよ」
「ごじょ、あそこ」
「って、いっても……」
「あそこ、あそこにいるの!」
悟空はもどかしげにバタバタと手足を動かし、悟浄は顔を顰め……。
「お?」
が、しばらくして悟浄も驚いたような顔で声をあげた。
「おぉ。すげぇ。見つけた。なんだ、あれ。細けぇなぁ。よくみつけたな、八戒」
そして八戒を振り返る。
「なんか目についちゃったんですよ」
「三蔵、お前、わかったか?」
「あ?」
次いで三蔵に尋ねると、人混みにうんざりしたような顔をしている三蔵がさらに不機嫌そうな顔になった。
「見つけられねぇのか? ほら、あそこに……」
なんだか勝ち誇ったように説明を始める悟浄を。
「それならすぐにわかった」
興味なさそうに三蔵は打ち切る。
「本当か? じゃあ、どこにあるのか指さしてみろよ」
むっとした顔で悟浄が言う。
言い争いめいたものが――しかもいささか低レベルのものが、起ころうとしたとき。
「お待たせいたしました。間もなく開場いたします」
場内にアナウンスが響いた。
「ほら。始まりますよ」
にっこりと笑って八戒がふたりを制す。
――悟空の教育上良くないですから、くだらない言い争いは別のところでしてくださいね。
とでも書いてあるような笑顔で、とりあえずふたりとも舌戦は中止する。
と、アトラクション会場に続く扉が開いた。
「はぐれないでくださいね」
八戒が先導するようになかに向かい、悟空を抱いたままの悟浄、三蔵がそれに続く。
「ネズミさん!」
「もうすぐ会えますよ」
期待に顔を輝かせる悟空に、八戒は優しい笑みを向けた。