ふたりの時間
早朝――というほどの時間ではないが、朝の公園は人が少ない。
日中時間帯なら人で埋まっている遊具近くのベンチに三蔵は腰をおろした。
まだ早い時間だがすでに気温は上がりはじめ、日差しもやや強い感じがする。
朝はまだ少し涼しいかもと、悟空に余分に着せていたのだがこれだと暑いくらいだろう。
三蔵は膝のうえに座らせた悟空の上着を脱がせにかかった。
悟空はおとなしくされるがままになっている。
やがて脱がせ終わり、三蔵は悟空を抱き上げて地面にと下ろした。
じっと大きな金色の目が三蔵を見つめる。
軽く頭を撫でてやると悟空は嬉しそうににっこりと笑い、それからいまにも転びそうな危うい足取りで駆け出していった。
いまの時間はほとんど人がいないから、だれかにぶつかるとか邪魔になるとか余計な心配はしなくてもよい。
まるで放し飼いだな、と八戒が聞いたら『動物じゃないんですから』と怒りそうなことを考える。
と。
とてとてと走っていた悟空がいきなりぺしゃんと地面に倒れた。
一瞬、地面に倒れたまま動きを止めるが、んしょ、という感じで立ちあがり、泣き出すことはなくまた駆けていく。
ほんの少し腰を浮かしかけた三蔵は、悟空の様子に改めてベンチに座り直す。
まだ頭の方が重いのか。気持ちに足が追いつかないのか。悟空はよく転ぶのだ。
そのたびにはっとするが、大抵、手助けすることもなく自力で起き上がってくる。
よく転ぶので転び方が上手になっているのだろう。
しょっちゅう擦り傷を作っているからか、少しくらいの怪我なら泣きもしない。
もともと余程のことがない限り手助けするつもりはないのだが、本当に手がかからない子供だ。
放っておいても、ひとり遊びを始めるし。
いまも地面にしゃがみ込んでなにやらやっている。
本当なら昼間に連れてきて、他の子どもと遊ばせる方が良いのだろうが。
悟空を見ながら三蔵は思う。
だが、しかし――。
眉間に皺が寄る。
――煩わしいのだ。
子供が、ではなくその保護者が。
一度だけ昼間の公園に連れて行ったことがあるが、うるさく話しかけられ面倒になって早々に引き返してきた。
だが、悟空にとっては周囲が大人ばかりというのもあまり良くないだろうし、なにか考えねばならないな……とそんなことを思っていたところ。
どん、と膝のあたりに衝撃がきた。
いつの間にか悟空が戻ってきて、膝のあたりにぎゅっと抱きついてきている。
「さんぞっ」
舌足らずな声とともに差し出されたのは小さな紫色の花。
「おんなじー」
三蔵の目の色と同じと言いたいのだろう。にこにこと嬉しそうに笑う。
悟空は三蔵と一緒にいるときがなにより一番嬉しそうな顔になる。
そんな様子を見て、もう少しこのままでもいいかと三蔵は思った。