急転 (2)
「はい。お疲れさまです。休憩でーす」
ようやくそんな声がかかって、ほおぉっと息をついた。
なんかもう、前回に引き続いて今回もよくわかんないままだ。
撮影って――結局、どんな風にしたらいいんだろ。
前のときも注文つけられるままポーズをとってただけだけど。
でも今回は、笑えとか嬉しそうにしろとか、そういうこと言われなくて良かった。
ほとんど目を閉じて俯いてるだけだった。
ので、周囲の様子がわかんなかったから、終わって顔をあげて、きょろきょろと辺りを見回す。
いない、かな。
いない――んだろうか。
いない――――みたい。
ふぅ、と肩を落とす。
なんだよ、もう。花嫁だけ? 花婿、いなくていいのかよ。
なんか見当違いなことに腹が立ってくる。
と。
目の前に手が差し出された。
この手……八戒――――じゃ、ないっ。
思わず凄い勢いで振り仰ぐ――――と、そこに。
「ふ、わぁ……」
知らず知らずのうちに溜息みたいなのが漏れる。
だって。
「き、れぇ」
すごい。
白のタキシード……っていうのかな、そういうのに身を包んだ姿は凄い綺麗で。
こういうのを『王子様』っていうんじゃないだろうか。
ぽぉと見ていたら。
「……アホ面」
そんな言葉が聞こえてきた。
そ、そんなにヘンな顔だったろうか。
ぎゃあと思ってわたわたしていると。
「ほら」
手を掴まれた。
ぐいっと引かれて、立ち上がりかけて――。
「ちょおっと待ってくださいっ!」
すると声が響いて、中途半端な姿勢で固まった。
「三蔵、三蔵。さっきのもう一度。悟空、ちょっともう一回座ってください」
え? え? え? ……と思っているそばから八戒がずんずん近づいてきて、ぐいぐい押されれて座り込み、せっかく繋いでいた手も離されて。
「悟空、三蔵の顔を見上げるようにして。で、三蔵は――」
なんだかよくわからないうちに、また撮影が再開された。