願い(おまけ)


「……というわけ」
 西へ向かう旅の途中の宿屋。三蔵に向かって、さっき買い物に行ったときのことを話していた。三蔵は新聞を広げたまま、こちらを見ようともしない。
「なぁ、三蔵、聞いてる?」
「聞いてない」
 茶に手を伸ばして、三蔵が言った。
「なんだよ、それ。ひでぇな」
「ひでぇもなにも。くだらんコトばかり言っているからだろうが」
「だって、昔、三蔵、言ったじゃん。何でも話せって」
「……忘れたな」
 一口、茶をすすって三蔵が答える。
「むぅ」
 頬を膨らませてみるが、本当は知ってる。
 三蔵はちゃんと覚えている。
 それに。
「なぁ、三蔵」
 立ち上がって三蔵の方に行く。ふわっと後ろから抱きついた。
「ずっと、一緒にいるからな」
 強く願えば、その願いは叶う。
 あの時、三蔵はそう言った。
 でも。
 どんなに強く願っても、願いは叶うとは限らないのを、今はもう知ってる。
 特に、ずっと一緒にいたいという願いは。
 だって、ひとりがどんなに一緒にいたいと願っても相手がそう思わなければ、その願いは叶わない。
 だから、俺が強く願えば、その願いが叶うというのは――。
 三蔵もそう願ってくれているということ。
「ずっと。いつまでも」
 繰り返して言う言葉に、三蔵からの返事はない。だけど、三蔵の目の前で組んでいた手を取られた。そして、そっと手の甲に唇が押し当てられた。
「さんぞ」
 嬉しくなって、三蔵の首筋に顔を埋めた。
 ずっと、いつまでも、一緒に。
 その願いは、変わることなく永遠に叶い続けていく。





最後までお読みいただきありがとうございます。
このお話は、MKさまからの800打のキリリクです。MKさまのリクエストは
「寺院の僧達に虐げられ我慢をしていた悟空に気づいた三蔵サマがその僧達に数倍返しをして、できれば、ラストは砂糖を吐いても残るような甘々で・・・」
だったんですが……えぇっと?
可哀相で悟空をあまり長く苛めてないとか(そんなこともない?)、三蔵サマも数倍返しってより本気で見殺しにしようとするのはもっと酷いんじゃないかとか、「甘々」のリクエストにちゅーのひとつもないとか(でも個人的に手の甲にキスはふつーのちゅーより恥ずかしいんですけど、なぜか)、リクエストに沿えたかどうか、かなーり疑問なのですが、書いているうちに楽しくなって頼まれもしないのに長編になってしまいました。
気に入っていただけるかどうかわからないのですが、MKさまに捧げます。
キリリク、ありがとうございました。
まりえ 拝