【原作設定】


2006年7月17日


 一瞬、辺りが白くなった。
 周囲が真昼より明るい白い光に包まれる。あまりにも明るすぎて、目が眩むほど。
 ほどなくして、響き渡る轟音。
 体の内側まで震わすような重い音が、光を追いかけて鳴り響く。

 怖い。
 けど、綺麗――。

 三蔵の頭に、雷を見たときの子供の言葉が蘇る。

 まさしくその通り。
 今、目の前にいるのは――。

 軽く手を握り、またそれを開く。
 ゆっくりと息を吐き出し、肩の強張りを解すように余分な力を外に逃がす。

 そこにいるだけで受ける、身も心も竦ませるような圧迫感。
 だが、大丈夫だ。
 手も、足も、まだちゃんと動く。

「いいぜ。終わりにしよう……」

 三蔵の口から囁くような声が響く。
 雷鳴が鳴り響くなか、その声は相手には聞こえなかったかもしれない。
 それでも構わなかった。
 もう既に言葉は届かないのだから。

 視線の先で、俯いていた頭が静かにあがった。
 空を走る稲妻の光を写し取ったかのような、輝く金色の目。
 微かに、その顔に笑みが浮かんだ。

 酷薄な、それでいて、壮絶までに美しい笑み。

 それが突然、消えた。

 否。
 三蔵の方に向かってくる。
 人では、到底、反応しきれない速度で。

 あたりを切り裂く光と音。

 ――殺してやるよ。

 最後に浮かんだ言葉は、いつかした約束。


 そして――。


(memo)
 雷の鳴っていた日に。