【原作寺設定】
黙って教わってろ


2006年11月5日


「ちょ……っ! 三蔵、なに……」

 胸元にある、金色の髪を掴んで引き剥がそうとする。

「ってぇなぁ」

 三蔵が不機嫌そうな顔で見あげてくる。

「だって、だって……っ!」

 うまく言葉に表せなくてわたわたしているうちに、三蔵はまた顔を伏せる。
 三蔵の息がかかる。そして――。

「ん……っ」

 くすぐったいんだけど、なんだろう。
 くすぐったいだけじゃないものが混じってる。
 と。

「やだっ! さんぞっ、どこ触って……?!」

 信じらんないところに、三蔵の手が伸びてくる。

「やめ、やめっ、やめてっ! も、やだっ」

 もう一度、髪を掴んで引きはがそうとすると、凄い顔で睨まれた。

「うるさいんだよ」

 不機嫌そうだけど、いつもとは少し違う。
 鋭い目が――怖い。
 でも、目が離せなくなって、そのまま見つめていたら、ゆっくりと三蔵が顔を近づけてきた。
 そして、触れる唇。
 軽く触れ合って、また離れていく。
 それは。

「……キス?」

 呟いた言葉に、三蔵の表情が少し動く。

「さっきの……が、キス?」

 口と口をくっつけるのが、キスだというのだと聞いた。
 だから、そう聞いてみた。

 微かに三蔵の口元に笑みが浮かぶ。
 そしてまた、顔が近づいてきた。

 柔らかな感触。
 頭の中に霞がかかるように、何もわからなくなっていく。
 だけど。

「やっ!」

 信じられないところに伸びたままだった手が、絡みつくように動き出し、意志とは関係なく、体が跳ねた。

「やだ、三蔵、やめっ、離してっ」
「教えてほしいんだろ?」

 まるっきり知らない人のような顔で三蔵がそう言う。

「だったら、黙って教わってろ」
「さ……んぞ……」

 怖い。
 なんだか、怖い――。
 だけど。
 だけど――。


 知らない顔。
 知らない感覚。
 知らない―――――快楽。


 それは、なにもかもが初めての夜―――。


(memo)
 「黙って教わってろ」 この台詞が書きたかったお話。