【原作設定】
ポッキーの日
2006年11月11日
「さんぞー、ポッキー食べて」
買い出しから帰ってきた悟空が、扉を開けるなりそう言った。
いきなりなんだ、と読んでいた新聞から顔をあげると。
ポッキーをくわえて、あごを突き出している悟空の姿が目に入った。
「……なんのつもりだ」
問いかけると、口にくわえていてしゃべれないせいだろう。こちらに迫るように、くいくいとあごが振られる。
「その状態で食えと?」
一応聞いてみると、悟空が嬉しそうな顔をしてコクコクと頷いた。
「っの、バカ猿」
あまりの馬鹿馬鹿しさに、思い切りハリセンを振り下ろしてやった。
「ってぇ! なにすんだよ!!」
衝撃で床に沈んだ悟空が、頭を抑えて起き上がってくる。
「なにするんだ、じゃねぇよ。お前こそ、馬鹿なこと、してんじゃねぇよ」
「だって今日は11月11日でポッキーの日だから、こうやってポッキーを食べなきゃいけないんだろ」
「……お前、それ、誰に言われた?」
答えはわかっているが、聞いてみる。
「へ? 悟浄?」
で、目をぱちくりと大きく見開いた悟空から、やはり予想通りの答えが帰ってくる。
「なんだってお前は毎回毎回、河童の話すそういうくだらねぇことを信じるんだ?」
「くだらないって……えぇ?! 嘘? 俺、だまされた?」
純粋に驚く様子に、頭が痛んでくる。
他人を疑わないのにもほどがある。
「だいたい、お前、自分が口にくわえているそれを俺が食べていったらどうなるかわかってるんだろうな。だんだん短くなっていって、それで――」
その光景を思い浮かべながら聞いていたのだろう。
いきなり、悟空の顔が、ぼんっと音をたてたように赤くなった。
ったく、そんなことも思いつかないなんて、本当に馬鹿だ。
だが。
うー、とかうなっている悟空の腕を掴んで引き寄せる。
「そんな風に誘わなくても、いつでも望むときにしてやるよ」
わかっていなかったことは百も承知で、そんな台詞を口にし。
そして、柔らかな唇を塞いだ。