【パラレル(SSオリジナル(江空))】
同級生
2006年11月21日
いつもよりも早くに目が覚めた。
もう一度寝てしまっても良かったのだが、なんとなく眠る気になれず、いつもよりも早く学校にいくことにした。
ちょうどいいんで、生徒会の仕事をしてしまおうと思って。
教室の扉を開くと、予想通り、しんと静まり返っていた。
こんな早くに学校にくるなんて、朝練があるヤツくらいだろう。
机の上にかばんを置いて、筆記用具だけ持って行こうとしたところ。
「あれ? 江流?」
勢いよく扉が開いて、茶色の頭が顔を覗かせた。
悟空だ。
確か運動部だったはずだから、これから朝練なんだろう。
だが、普通はわざわざ教室に来ないで、部室に行くと思うのだが。
「早いね。どうしたの?」
そういいながら、悟空はかばんを机に放り投げると、教壇に向かっていく。
「生徒会の仕事だ」
「あぁ。もうすぐ文化祭だもんね。ご苦労さま」
「お前は部活か?」
「うん。そう。その前に……」
悟空は、ひょいと教壇の上に飾ってある鉢植えの花を持ち上げると、パタパタと廊下に出て、しばらくするとまた戻ってきた。
それから、窓際の陽のあたるところに鉢を置く。
「お前、いっつもこんなことをしてたのか?」
「へ?」
言われたことの意味がわからないかのように、金色の目が大きく見開かれる。
「水やり」
「あぁ。うん、そう」
「なんで?」
「なんでって……水やらないと、枯れるだろ?」
当たり前のように悟空はそう言い、
「じゃ、また」
軽く手を振って、教室を出て行く。
しばらくの間なんとなく呆然と、その姿が消えていった扉を見ていた。
花が教壇の上にあるのは知っていた。
だが、それだけだった。
水をやらなければ枯れる。
それも知っていたはずなのに、そんなこと、考えたこともなかった。
窓際の鉢植えの花に目を転じる。
朝の光に、花が輝いて見えた。
たぶん、それが始まり――。