【パラレル(先生×生徒)】
2回目


2006年12月14日


 1回目は無我夢中で。
 でも、2回目はその時のことを覚えているから――。


 弁護士の先生に会ったり、先生が会議とかで遅かったりして、今日は数日ぶりに先生と一緒に夕飯を食べられた。
 夕飯の片付けをして、お風呂に入り、宿題も片付いたから、のんびりとダイニング・キッチンでテレビを見ていた。
 と。
 お風呂から出てきた先生にふわりと抱きしめられた。
 心臓が跳ねあがる。
 サラッと先生の髪が落ちてくるのが目の端に見え、ふわりとシャンプーの香がした。
 それは、俺と同じ香で。
 当たり前のことなのに、なんだか心臓の鼓動が余計に早くなった。

「……悟空」

 耳元で低く囁く声がする。
 それは、体を芯から痺れさせていくような声。
 また心臓の鼓動が早まり、ドキドキいう音が頭の中で響いているような感じがする。
 慌てて深呼吸をして静めようとしてみるが、うまく呼吸ができない。
 というか、過呼吸気味なのかもしれない。
 先生の手がリモコンに伸びて、テレビの音がぷっつりと消えた。
 静かな――静かな部屋に、心臓の音が響いているんじゃないかと思う。

「嫌なら言え」

 先生の言葉に、少し息を呑む。
 それがなにを意味しているのか、わからないはずはない。
 初めての時は、よくわかっていなかった。
 でも、今は。
 そのときの痛みも、そして快楽も、すべて体に刻まれて覚えているから。
 だから。
 少し、怖い――。
 でも。
 ゆっくりと、首を横に振った。

「途中でも嫌ならそう言え。保証はできねぇが、なるべく努力してみるから」
「大丈夫」

 体を反転させて、先生と向き合う。
 綺麗な紫暗の瞳。
 そこに浮かぶのはいつでも優しい色だから。
 だから、大丈夫。

「泣いても、大丈夫だよ。だから、途中でやめないでね」

 そう囁き返すと、先生が軽く目を見開いた。
 それから。
 微かな苦笑が唇に浮かぶ。

「どうしてお前は、そうやって挑発するようなことを……」
「挑発って、別に」

 そんなつもりはない。
 そう言おうとしたところ、抱き上げられて言葉が途切れる。
 いわゆるお姫さま抱っこ。
 この間もそうだったような気がする。
 あの時は、ふわふわした心持ちで、あんまり考えられなかったけど。
 これってよくよく考えてみると、結構恥かしいことじゃないだろうか。

「先生、降ろして。歩ける」
「黙ってろ。それとも、黙らせてやろうか?」

 口元に浮かぶのは、今度はちょっと意地悪な笑み。
 むぅ、と思うが、先生の顔を見ているうちに、なんだか自然に笑みにと変わってしまう。
 そして。
 引き合うように、キスを交わした。


(memo)
 パラレルにある「A Dime A Dozen」の3日後くらいのお話