【パラレル(SSオリジナル(飼い主×ペット@))】
猫耳
2007年1月26日
「あ、あ、あーっ!!」
扉が開くのと同時に叫び声がした。間髪も入れずに突風が押し寄せてくる。
反射的によけたソファーの横に、人影がドンっとぶつかった。
「よけるなんて、ひどいっ」
額を押さえて人影が起き上がってくる。結構いきおいよくぶつけたようで、大きな金色の目に涙がうっすらと浮かんでいた。
「普通だったら、受け止めてくれるでしょ。愛が感じられないっ」
「……ねぇよ、そんなもん」
「ますます、ひどいっ! ってか、そんなことより」
……そんなことか。
「それ。それ、どうしたの?!」
悟空が突進してきたときに、反射的に膝から抱き上げたものに、手が伸びてきた。
というか、奪い取られる。
「ここは俺の場所なんだから、とっちゃダメ」
言いつつ、悟空はそれを床に降ろす。
「にゃあ」
だが、それは一声鳴いて、またそばに寄ってこようとする。
「ダメだったら、ダメっ!」
威嚇するように大声をあげ、悟空が膝の上にと乗ってきた。
「……どういうつもりだ」
向かい合うように膝の上に座る悟空に問いかける。
「だって、三蔵の膝は俺の場所だもん。これは譲れないからねっ」
ビシッという感じで床にいる猫の方を振り向く。
「猫と争ってどうする」
「猫だろうが、人間だろうが、一緒。俺から三蔵を取り上げようとするものとは戦うに決まってるじゃん。ってよりさ、あれ、どうしたの?」
聞かれて、少しいじめてみたい気がしてくる。
「飼う、といったら?」
「反対っ」
即座に答えが返ってくる。
「といっても、ここは俺の家だ。俺がなにをしようが自由だろ?」
「でも、反対っ! だいたい飼うのは、俺だけで充分だろ。……それとも満足できない?」
金色の目に蟲惑的な色が宿る。
「三蔵が望むんだったら、さ」
首に腕を巻きつけてくる。
熱い吐息が耳にかかる。
「猫耳とか猫しっぽとかつけてもいいよ?」
「そっちか」
なんで、そっちに話がいく。
思わず伸ばした手が止まる。
「えぇ? だって、可愛いと思うけど。猫耳に猫しっぽ」
いわれて、うっかりと想像してしまう。
「可愛いでしょ?」
「……」
にっこりと笑って問いかけてくるのに、沈黙で答えた。
「今度、八戒のトコから借りてくるね。だから、あれ、どっかにやってね」
「心配しなくても、ただの預かりものだ」
「そっか。よかった」
再び、にっこりと笑う悟空を今度こそ引き寄せた。