【パラレル(SSオリジナル(飼い主×ペット@))】
わがまま


2007年2月1日


 ソファーに寝そべって、じっとドアを見つめていた。
 じっと、ドアが開くのを待っていた。

「……遅い」

 思わず呟く。
 と、呟いたら、なんだが我慢できなくなってきた。

「遅い、遅い、おっそーい!」

 半身を起こして、バシバシとクッションを叩く。
 なんで、ここで待ってなくちゃなんないんだよ。邪魔しないのなら、仕事部屋にいてもいいって、自分で言ったくせにっ。

 邪魔なんかしてないのに、追い出された。
 ただじっと見てただけなのに。

 きらきらな髪が綺麗で、深い紫の瞳が綺麗で、通った鼻筋が綺麗で、長い指が綺麗で。
 俺の飼い主さまは、一等、綺麗だと思う。
 誰よりも誰よりも綺麗だと思う。
 自慢の飼い主さまだ。

 ――外見に関しては。

 中身は超絶わがまま。いきなり、うっとおしい、とか言われて部屋から追い出された。
 もちろん抵抗した。
 でも、問答無用で追い出された。仕事になんないって言われて。

 しょーがないから、部屋の扉の前でうずくまって待っていた。
 仕事が終われば出てくるって思って。

 だけど、それさえも怒られた。
 気が散る、とか言われて。
 見えないのに、気が散るもなにもないじゃんか、ってコウギしたけれど、結局、ここに追いやられた。

 ずいぶん、ヒドイ扱いだと思う。
 もしかして俺ってスゴイ可哀想かも。

「わがままな飼い主を持つと苦労するなぁ……」

 しみじみと呟いたところ、扉が開いた。

「誰がわがままだ」
「さんぞっ」

 戸口に三蔵が立っていた。
 駆け寄っていって、飛びついた。
 わがままでも、自分勝手でも、気まぐれでも、それでもやっぱり一番好きだから。

「……お前、なぁ。人のことを言えるのか? わがままも、自分勝手も、気まぐれも自分の方だろうが。自分が懐きたいときだけ懐いてくるくせに」

 あれれ?
 さっきの心の中じゃなくて、口に出して言っちゃったかな。
 ま、いっか。どっちでも。

「それでも、いつだって一番好きだよ」

 この言葉さえ伝われば、それでいい。
 ぎゅっと抱きつく手に力をこめた。



(memo)
 たぶんうさぎではないです(笑)
 同じようなシチュエーションが他サイトさまにありますが、真似っこではないのです。(本当です)
 考えることは一緒だった、ということで。