【パラレル(SSオリジナル(飼い主×ペットA))】
ちゃんと可愛がって、ね?


2007年3月16日


 カチャリ、と音がしてドアが開いた。
 ぱっと顔をあげると、そこに大好きな飼い主さまがいた。

「さんぞっ」

 駆け寄って、飛びつこうとしたところ。

「このっ、バカ猿っ」

 スパーンとハリセンをお見舞いされた。
 思わずうずくまる。

「バカじゃないし、猿でもないもんっ」

 結構痛くて涙目で見上げると、こめかみに青筋を浮かべ、部屋を見回している三蔵の姿が目に入った。

「散らかすな、ものは元あった場所に戻しとけと、いつもいってるだろーが。そんなこともできねぇヤツがバカでなくて、なんなんだ」

 床の上に散乱したおもちゃに本、ソファーの上のタオル類、それから……。
 改めて見てみると、部屋の中はごちゃごちゃで凄い惨状だ。
 だけど。

「さんぞーがわるい」
「はぁ?」
「3日もほっといて」
「3日……?」

 ひどく不機嫌だった三蔵の表情が、ちょっと考え込むようなものに変わる。
 三蔵は仕事に没頭すると、時間の感覚がなくなる。食事をとるのも忘れるくらいだ。
 でもって、すごく不本意なことに、俺がいることも忘れる。
 一度、それが気に入らなくて仕事の邪魔をしたら、こっぴどく怒られて捨てられそうになった。
 凄く怖かった。
 だから、それ以来、仕事の邪魔はしないようにしてるけど。

「寂しくて、死んじゃうかと思ったぞ。お仕事だから、邪魔しちゃダメだから、ずっと、ずぅっと我慢してたんだから」

 すりっと、三蔵に擦り寄る。
 三蔵の匂いだ。
 凄く安心する。
 ようやく、三蔵に触れられた。

「ペットはちゃんと可愛がって、スキンシップをとってあげなきゃいけないんだぞ」

 今度はこっちがむっとした表情で見上げる。
 と、なんだか諦めたようなため息が降ってきて、それから、抱き上げてくれる。
 へへへ、と笑って、頬を擦りつける。

「さんぞー、大好き」

 そう言うと、答えのようにゆっくりと撫でてくれた。
 ますます嬉しくなって、ますますそばに寄った。

――離れていた分、ちゃんと可愛がって、ね?


(memo)
 こちらはたぶんうさぎ設定。…たぶん?