カチャリ、と音がしてドアが開いた。
ぱっと顔をあげると、そこに大好きな飼い主さまがいた。
「さんぞっ」
駆け寄って、飛びつこうとしたところ。
「このっ、バカ猿っ」
スパーンとハリセンをお見舞いされた。
思わずうずくまる。
「バカじゃないし、猿でもないもんっ」
結構痛くて涙目で見上げると、こめかみに青筋を浮かべ、部屋を見回している三蔵の姿が目に入った。
「散らかすな、ものは元あった場所に戻しとけと、いつもいってるだろーが。そんなこともできねぇヤツがバカでなくて、なんなんだ」
床の上に散乱したおもちゃに本、ソファーの上のタオル類、それから……。
改めて見てみると、部屋の中はごちゃごちゃで凄い惨状だ。
だけど。
「さんぞーがわるい」
「はぁ?」
「3日もほっといて」
「3日……?」
ひどく不機嫌だった三蔵の表情が、ちょっと考え込むようなものに変わる。
三蔵は仕事に没頭すると、時間の感覚がなくなる。食事をとるのも忘れるくらいだ。
でもって、すごく不本意なことに、俺がいることも忘れる。
一度、それが気に入らなくて仕事の邪魔をしたら、こっぴどく怒られて捨てられそうになった。
凄く怖かった。
だから、それ以来、仕事の邪魔はしないようにしてるけど。
「寂しくて、死んじゃうかと思ったぞ。お仕事だから、邪魔しちゃダメだから、ずっと、ずぅっと我慢してたんだから」
すりっと、三蔵に擦り寄る。
三蔵の匂いだ。
凄く安心する。
ようやく、三蔵に触れられた。
「ペットはちゃんと可愛がって、スキンシップをとってあげなきゃいけないんだぞ」
今度はこっちがむっとした表情で見上げる。
と、なんだか諦めたようなため息が降ってきて、それから、抱き上げてくれる。
へへへ、と笑って、頬を擦りつける。
「さんぞー、大好き」
そう言うと、答えのようにゆっくりと撫でてくれた。
ますます嬉しくなって、ますますそばに寄った。
――離れていた分、ちゃんと可愛がって、ね?