【原作? パラレル?】* 注意
一番好きな瞬間(とき)


2007年3月29日


 うまうま。
 目の前には山と積まれた温泉饅頭。片端から口に運んでいく。
 ここは鄙びた温泉旅館。
 いきなり三蔵が温泉に行くって言い出したときは驚いたし、着いたところがホントに周りになーんもないところで少々がっかりもしたけど、温泉は気持ち良かったし、メシは美味かったし、いつもなら買ってくれない温泉饅頭も山ほど買ってくれたし。
 幸せだ。
 でも、あまりに幸せすぎて、気づかなかった。
 後ろから三蔵がにじり寄ってきてたのに。

「うわっ、なに?!」

 なんか捕獲でもされるかのように、後ろから抱き込まれてびっくりする。

「なにって……決まってると思うが」

 耳元で、どこか楽しげな声がする。
 するりと、浴衣の合わせ目から手が滑り込んできた。

「ちょ……っ」

 ポロリ、と手に持っていた食べかけの温泉饅頭が、畳の上に転がる。
 勿体ない、と手を伸ばそうとするが。

「あっ、や……っ」

 巧みな指に弾かれて、引き戻される。

「なに……するんだ……よっ!」
「マジでわからないのか?」

 本当に楽しそうな声。
 肌を辿る指に、あげようとは思っていなくても、普段は絶対に出ない声が漏れる。

「ふ……ぅっ……んんっ」

 こんなときには、いろいろと知られてしまっている自分の体が恨めしい。
 一生懸命押し戻そうとはしてるけど、三蔵の手は的確に、絶妙な力加減で『イイトコロ』に触れてきて、力が入らない。

「良い眺めだな」

 クスリという笑い声とともに、濡れた温かな感触が背中に降りてきた。
 浴衣は服よりも簡単に脱げてしまう。布はすでに肩からずれ落ちて、すごい格好になっていた。

「誰がそんな風にしてるんだよっ」

 浴衣の合わせ目を掴んで元に戻そうとするけど、三蔵はそれを許してくれない。

「あ、あっ、あぁぁっ」

 それどころか、一番感じるところにと手が絡みついてくる。

「いやっ、やぁ……んっ」

 まるで弄ぶかのような手の動きに翻弄される。

「さん……ぞっ」

 切羽詰ったような声で呼ぶと、顎に手がかかりキスをくれた。
 魂まで持っていかれるんじゃないかというくらい、最初から深いキス。
 キスをしながら、体を反転させて向き合った。
 何度もキスを交わす。
 そして。
 ……あったかい。
 ふと思った。
 無意識のうちに三蔵の浴衣の合わせ目を掴んで、乱してしまったらしい。
 肌と肌が触れ合って、温もりが伝わってきた。
 その人肌の温もりに安心する。
 もっと欲しくなって。

「大胆だな」

 呆れたような、でもどこか嬉しそうな三蔵の声。
 浴衣は本当に服よりも簡単。
 左右に広げて、露になった胸に頬を寄せる。

「そぉ? もっと欲しいよ」

 胸元から見上げると、三蔵の目が少し見開かれたのがわかった。
 だけど、その表情はすぐに笑みにと変わる。

「上等」

 そして、柔らかな温かさに包まれていった。


 ――それが一番好きな瞬間(とき)。



(memo)
 ……たぶん温泉ネタで盛り上がっていたのではないか、と。勢いで書いてます。