【パラレル(親子?設定)】
キス
2007年8月23日
「だから、三蔵は難しく考えすぎなんだよ」
いきおいでベッドに押し倒したまま、上から見下ろす感じでいう。
なんだかこうしていると、三蔵がすごく無防備に見える。
新発見。
で、もう一度、キスをした。
「……てめぇ」
びっくりしたのから、覚めてきたのだろう。
三蔵の目に険悪な光が浮かんだ。
「睨んでもダメ。俺が一番怖いのは、三蔵に嫌われることだけど……」
負けないように、じっと目を見る。
「でも、このままなかったことにされるんなら、その方が数倍もマシ。ね、俺は答えがほしいんだよ」
「だからちゃんと答えたろうが」
「保護者だから? 責任があるから? そんな理由で、ちゃんと考えるのを放棄すんなよ。だいたいな、頭で考えることじゃなくて、もっと単純なことだろうが」
視線を固定させたままで、顔を近づけていく。
逸らしたら負け。
二人してそんな風に思っているのか、見つめ合うというよりは睨み合うって感じで、ほとんど顔が見えなくなるくらいまで近づいても、互いに視線は合わせたままでいた。
なんだか勝負事みたいだ。
そう考えて、笑いたくなる。
違うよな。
俺がしたいのはそういうんじゃなくて。
「な、俺とキスをするのは嫌? 気持ち悪い?」
ほとんど唇が触れあうくらい近くで囁く。
「俺は――嫌じゃないよ。もっと、触れたいって思う。もっとちゃんと三蔵に触れたい」
自分の吐息が三蔵の唇にぶつかって返ってくるのが感じられるくらいの近い距離。
あとほんのちょっとを詰めようとしたところ、俺を押し戻すようにして、三蔵が起き上がってきた。
この後におよんで、また逃げようとするのかよ。
むっとして、逃がさないように腕をつかもうとして。
「あ、れ……?」
くるんって体が回る感じがした。
そして、気がついたら。
「バカ面……」
視界いっぱいに三蔵の顔。
それはさっきまでと一緒だけど。
でも。
いつの間に上下が逆になってるんだろ。しかも、三蔵はさっきまでと全然違う表情をしてるし。
あれれ?
なんて思っているうちに、三蔵の顔が近づいてきた。
「……っ!」
驚きすぎて、声が出ない。
だって、いま――。
「お前、自分からしたときは全然平気そうな顔をしてたくせに」
口を押さえて、たぶん真っ赤になってる俺を見て、どこか楽しそうに三蔵がいう。
でもだって、自分からするのと、してもらうのは違うだろ。
根本的に。
気の持ちようが。
ってか。
「さんぞ……っ」
キスをしてくれたってことは、三蔵は、俺のことが好きだって気づいたってこと?
そう聞こうと思ったのに、口が塞がれてしまう。
あ、これは、おとなのキスというやつだ。
口のなかに入りこんできた舌を、最初はびっくりして、でもすぐに夢中になって追いながら考える。
そういうことは、あんまり口に出していってくれない性格だってのは知ってる。
このキスをくれるというのは、つまりは俺の想いは叶ったということだろう。
嬉しくて。
幸せな気分に身をまかせた。
けど、その後。
とんでもない痛みに、幸せな気分も一瞬で吹き飛んだ。
だって。
あんなことするなんて、ふつーは思わないだろ……。