【パラレル(SSオリジナル(親子?))】
炬燵でアイス


2008年1月6日


 正月明けの商店街は思っていたよりも人で賑わっていた。
 といっても、まだ正月気分は抜けきっていないようで、道行く人たちはどこかのんびりした雰囲気を漂わせていた。
 が、それでも、小さな子供を連れて歩くには、それなりに気を遣う。

「こら、悟空、余所見をしているとはぐれるぞ」

 きょろきょろと辺りを見回す小さな子供に声をかける。
 手を差し出すと、途端に満面の笑みを浮かべて、しがみついてきた。

「さんぞーとおでかけ、うれしい」

 このまま歌い出してしまうかのように、声が弾んでいる。

「ちゃんと前見て歩けよ。転ぶぞ」

 なにか楽しいのか、こちらを見上げるにこにこした顔に注意を与える。

「へいき。ころんでも、さんぞといっしょならいたくない」
「……なわけねぇだろ」

 小さな子供がそうであるように、悟空もよく転ぶ。
 転んだからといって大泣きをするようなことはないが、痛いことに変わりはない。
 怪我をすると、すっとんでくる。
 まぁ、それは甘えたいからかもしれないが。

「さんぞ、あいしゅ」

 そんなことを考えていたら、悟空が話しかけてきた。

「あ?」

 考え事をしていたため、いっていることがイマイチつかめない。

「あいしゅ。あいしゅ、買って」
「アイス?」

 聞き返すと、こくこくと首が縦に振れた。

「お前、この寒いのにアイスなんか食えねぇだろうが」
「くえるー。おうち、おこた、ぬっくぬくー」

 確かに部屋の中は暖かいかもしれないが。

「食ったら寒くなるぞ」
「へいき、だもん」

 ぷう、と頬が膨らむ。
 その『へいき』という根拠がどこにあるのか聞いてみたいものだが。

「……小さいの、ひとつだけだぞ」

 そう答えると、ぱぁっと顔が明るくなった。

「うん! ありがとー」

 正直、甘いと思う。
 が、とても嬉しそうな笑顔に、たまには良いかと思いなおした。


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