【パラレル(SSオリジナル(飼い主×ペットA))】
おかえりなさい(推定うさぎの場合)


2008年5月13日


 家に帰ってきて、リビングのドアを開けると、たたんでしまったはずのタオル類が床に散らばっていた。
 その光景に、三蔵は眉間に皺を寄せた。

 もこもこと膨らんでいるのは、その下に悟空が隠れているからだろう。
 悟空は、洗い立てのふわふわとした感触とお日さまの匂いが大好きで。
 よくこうやって洗濯物に包まっては三蔵に怒られる。

 今日は午後から出かける用事があったので、早めに洗濯物を取り込んだ。
 三蔵が出かけてしまうのを嫌がる悟空を、土産を買ってくるからと宥めておいていったのだが。

「ったく、土産はお預けだな」

 三蔵は呟くと、大またでもこもこの山にと近づいた。
 ひょいとタオルをめくると、予想通りそこにはくぅくぅと寝息をたてて悟空が丸まっていた。
 ぷくぷくとした頬が淡く赤く染まっている。
 思わず手を伸ばして、つついてみると。

「うにゃ」

 小さく鳴き声らしきものがあがり、それからコロンと転がって、悟空は三蔵の指を捕まえた。

「……さんぞ」

 起きて、そこに三蔵がいることがわかったわけでもないのに、悟空はへにゃと嬉しそうに笑う。
 その笑顔に、なんとなく三蔵は脱力した。
 ハリセンで叩いて起こそうかと思っていたのだが…。

「おい、悟空」

 軽く揺すって起こしにかかる。

「こんなところで寝るな」
「う、みゅみゅう」

 何度か揺すると額に皺を寄せ、それからむずがるような様子で悟空は目を開けた。
 2、3度目をしばたたかせ。

「さんぞっ」

 目の前に三蔵がいるのにようやく気がついて、満面に笑みを浮かべて飛びついてきた。
 嬉しげな様子ですりすりと頬を押しつける。
 が、三蔵の様子が何か変なことに気づき、小首を傾げつつ悟空は顔をあげた。
 そして三蔵の視線を辿り。

「ぴゃっ」

 と、一瞬、固まってから、急いで三蔵の膝から降りる。
 散乱する洗濯物を集め、ちらりと三蔵の様子を伺う。
 なんだかそんな悟空の表情の移り変わりがおかしくて。
 三蔵は、微かに唇の端に笑みを刻んだ。

「それ、きちんとたたんで片付けとけよ」

 そういってリビングをあとにする。
「さんぞっ」

 と、その背中に声がかかった。

「なんだ? 土産なら、ちゃんとしまうまでおあずけだぞ」
「違う」

 悟空の首が横に振られる。
 ぐっと握りこぶしを作ってから。

「おかえんなさいっ」

 大きな声で、なんだか必死の面持ちで悟空はいう。
 その様子に、未だに「捨てられるかも」と思っているのがわかり。
 三蔵は、ふっと短く息をつくと悟空の方に引き返した。
 ぐりぐりと頭を撫で、そして。

「ただいま」

 そういってやると、悟空の顔にまた満面の笑みが浮かんだ。