【パラレル(大学院生×高校生)】
おかえりなさい(Little Ordinaries設定の場合)


2008年5月19日


 三蔵が家に戻ると、いつもならば出迎えに出てくるはずの悟空の姿がなかった。

 買い物にでも行っているのか、とあまり深く考えることもなく、土産に買ってきたプリンを冷蔵庫に入れようとして。
 リビングのソファで、寝こけている悟空の姿が目に飛び込んできた。

 今日は初夏を思わせるような陽気だったが。
 それでも、こんなところでなにも掛けずに寝てたら風邪をひくのではないだろうか。
 そう思い、起こそうとして。

 半ズボンからのぞく、すんなりとした足が目にとまった。

 手を伸ばして、滑らかな肌を確かめるように指を滑らせる。

 クスリ、と。
 声には出さずに、三蔵は笑った。



「ん……っ」

 なんだかざわざわとした感触に、悟空はうっすらと目を開いた。
 目の前に、キラキラと光るものが見える。

「……さんぞ?」

 それが三蔵の髪であることに気付き、なんだかわからないままも悟空は呼びかける。
 と。

「ふ、あっ」

 突然、甘い、痺れのようなものが体を駆け抜けていった。

「な、なに? あっ、んぅ」

 ピクン、と反射的に体が跳ねた。

「やぁ、ぁんっ、さんぞっ」

 三蔵の髪に指を差し入れて、引き離そうと必死になってもがく。

 すると。
 痛みをともなった快楽が走り。

「ふ……」

 思わず声をあげそうになって、悟空は手を噛んで声を殺した。

「バカ、なにしてるんだ」

 手の甲を噛んだまま、肩で息をしていたところ、そっと手を取られた。
 噛み痕に、優しく唇が押しあてられる。

「……それは、こっちの台詞」

 涙が浮かぶ目で三蔵を睨んで悟空は言う。

「なにしてるんだよ」

 それから、まくりあげられているTシャツを元に戻そうとして。
 その手が止められる。

「さんぞっ! って、うわっ」

 抗議の声は、強引にTシャツを脱がされることで遮られる。
 むっとして起き上がろうとしたところ、のしかかられてソファに沈められる。

「ちょ……っ」

 文句を言おうと開けた唇は、唇で塞がれた。

「……んっ」

 絡め取られた舌にくらくらと頭の芯が痺れてくる。
 交換しあう唾液は甘く――どこまでも、甘く。

「……も、三蔵のあんぽんたん」

 やがて唇が離れていくと、呟くように悟空は言う。

「おかえりなさい、も言ってないのに」

 もう一度、唇が深く重なってくる。
 何度も繰り返し、角度を変えて唇を合わせながら。

「……ただいま。これでいいだろ?」

 三蔵が低く囁く。

「ずりぃ。こんなときばっか言うなんて」

 しかも甘い声で。
 拗ねたような表情を見せながらも。
 ぎゅっと、しがみつくように悟空は三蔵に抱きついた。