【原作設定】
おはよう


2009年8月4日


う、にゃ……?

ふわり、と意識が浮かび上がってきた。
朝、だ。
でも、まだ目蓋が重くて、目は開けられない。
くん、と辺りの匂いを嗅ぐ。

あれ、さんぞーは……?

すぐ近くにあるはずの温もりと匂いがない。

くん、くん。
くん、くん。

ゆっくりと頭を回す。
と。

あ、こっちだ。

もぞもぞと動く。
ぴたりとくっついて。
安心して丸くなったところで。

「おい」

上から声が降ってきた。

「起きたんなら、起きろ」

突き放すような言い方だけど、頭に置かれた手は優しい。

「さんぞー」

だから、ぽよぽよと目を開ける。

「おあよー」

あくびとともにいって、ベッドの端に座っている三蔵の腰にしがみつく。

「寝ぼけてるのか」
「寝ぼけてねぇもん」

もうちょっとひっついていたいだけだもん。
でも。
こしこしと目を擦って、起き上がる。
ぽやっとした視界に三蔵が映る。

えへへ。
凄い綺麗。

ちょっとだけ腰を浮かすと、三蔵と同じ目の高さになる。
三蔵の首の後ろに手を回して、近づいても――怒られない。
それに気をよくして、もっと近づく。

吸いこまれそうに深い紫の瞳。

この距離で見られるなんて。
幸せ。

へにゃと笑う。

「お前は……」

溜息、ひとつ。
盛大に呆れてる。

でも、いいじゃんか、幸せなんだし。
そう思ったところ。

「朝飯、行くぞ」

三蔵はそういって、戸口に向かう。
そのときに。

軽く触れて、離れていく――唇。

おはようのキスだ。

「三蔵」

寝台から飛び降りて、追いかけて。
嬉しさのあまり後ろから抱きついた。