【原作設定】
意地っ張り


2009年8月16日


「も、や……」

震える声をあげて、悟空はベッドに沈みこんだ。
さきほどまで三蔵を押し返そうとしていたのだが、もう力が入らない。
と、さらに足を広げられ、きわどいところぎりぎりに唇が降りてくる。

「ん……っ」

思わず震えが走る。
と、今度は柔らかい内腿に唇が押し当てられた。

「さ……んぞ……っ」

苦しげな、それでいて甘やかな声で悟空は三蔵の名を呼ぶ。
それは三蔵の耳に心地よく響く。

微かに笑みを刻み。
下から上へ。
ゆっくりと、まるで柔らかな感触を楽しむように、唇で内腿を辿っていく。

が。
付け根のところまで来ると、それ以上は行かずにまた下にと引き返す。

「ん……っ、ぅんっ」

悟空の震える指がシーツを手繰り寄せ、きつく握りしめる。
緩やかな刺激はただ熱を集めていくだけで、それをどうにかしようとはしてくれない。

「意地、悪ぃ……っ」

息をつめて、体に力を入れて、足を振り解こうとするけれど。
ふっと吐息が集まる熱の中心にかかって。

「ひ、あぁっ」

思わず、甲高い声が漏れる。
疼くようなぴりぴりとした感覚をやり過ごし。

「も、なんだよっ」

肩で息をし、涙目になりながら、悟空は腕の力で少しだけ上半身を浮かす。

途端に、自分の足の間に三蔵の金色の髪があるのが視覚的に意識させられて。
思わずまたシーツに沈みこみそうになるが、なんとか意志の力を総動員してそのままの姿勢を保つ。

「いきなり、こんなことっ」
「……お前が悪ぃんだろ」

顔をあげて。
先程までの笑みはどこにやったのか、不機嫌そうな瞳で三蔵は悟空を見る。

西へ向かう途中。
野宿が続いたあとにようやく辿りついた街の宿屋。
一緒に風呂に入るのは恥ずかしいから嫌だという悟空に先にバスルームを使わせて、その後、三蔵がシャワーを浴びて出てくれば。
ものの見事に、悟空は寝こけていた。

「しょーがねぇだろっ。久しぶりの布団だし。だいたい俺、スルなんてひとことも言ってねぇもん。三蔵が勝手に……っ」

ふたたび吐息がかかり、勢いよく飛び出していた言葉は途中で切れる。
唇を噛みしめて、どうにかあがってしまう嬌声を耐えて。
きっと悟空は三蔵を睨みつけた。

「だが、いまはスル気になってるんじゃねぇのか?」

そんな悟空の視線もどこ吹く風で。
ふたたび柔らかな内腿を吸い上げて赤い痕を残しながら、三蔵が言う。

「なって、ないっ」
「そうか」

ぎりぎり、触れるか触れないかのところに唇を落とし、三蔵が呟く。

「じゃあ、スル気になったら言えよ」

言うまでココはこのままだ。
言外にそういう意味を含ませて。
三蔵は少し悟空の腰を持ち上げるようにして、待ち望んでいるかのような場所ではなく、後ろに向かって舌を這わせる。

「……っ」

悟空は、ビクンと体を跳ねあげるが、唇を噛んで声は押しとどめる。

「……ぜってぇ、言わねぇ」

透明な滴を浮かべながらも、強さを失わない金色の瞳と、どこか傲然とした色を浮かべる深い紫の瞳が再びぶつかり合う。

そして――。





結局、その後、どちらが折れたのかは、翌日のふたりのまったく変わらぬ態度からは窺い知ることはできなかった。