【パラレル設定(NovelTopOriginal親子?)】
トリック・オア・トリート



「とりっく、あー、とりぃ」
 パタン、と扉が開いたと思ったら、いきなりそんなことを言われた。
「あぁ?」
 思いっきり不機嫌な顔で振り向いたにも関わらず、小さな体がトコトコと歩いてきて、ぽふっと膝に抱きついてきた。
「だから、とりっく、あー、とりぃなの」
 よじよじと、膝の上にあがってくる。
「おい、こら。仕事をしてるときには邪魔をするなとあれほど――」
 台詞を全部言い終わらないうちに、小さな体は膝の上に落ち着き、大きな金色の目を嬉しそうに輝かせて、見上げてきた。
 いつも思うのだか、どうしてこいつはこんなに小さくて、軽いのだろう。
 来年は小学校にあがるというのに、どうかすると幼稚園の年少組の子供よりも小さい。
 人一倍、食べさせてやっているというのに。
「降りろ」
 とりあえず、そんな感慨は後回しにし、膝の上の子供に命じる。
「やっ」
 だが、一声で拒否される。
 と言っても、それを聞く気はない。
「面倒なことはさせるなよ。仕事中は邪魔すんなっていつも言ってるだろうが」
 猫の子のように、首根っこを掴んで引き剥がしにかかる。
「やー、なの。おかしくれなきゃだめなんだもん」
「は?」
 しっかりとしがみつき、なんだかわけのわからないことを言い出す悟空に手が止まる。
「とりっく、あー、とりぃっていったら、おかしくれるって、はっかいがいってたもん。おかしくれなきゃ、いたずらしていいって、ごじょーがいってたもん」
 お菓子? いたずら?
 それでようやくわかった。
 トリック・オア・トリート。
 お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。
 ハロウィンか。
「お前、さっきおやつ食ったばっかりだろ。これ以上食ったら、メシ、食えなくなるだろうが」
「だいじょうぶだもん」
「大丈夫じゃねぇよ」
「じゃ、いたずらするんだから」
 ぷぅと頬を膨らませて、悟空がいう。
「やれるもんなら、やってみろ」
 そういってやると、余計に悟空の頬が膨らんだ。
 きょろきょろと見回してから、考え込むように俯く。
 以前、仕事道具にいたずらしたときに、こっぴどく叱ってやったから、ここで何かをすれば、どうなるかわかっているはずだ。
 と、むぅっと考え込んでいた悟空が、突然、手を伸ばしてきた。
 頬を包みこむようにして、顔を近づけさせられる。
 そして。
「おま……っ!」
「えへへ。おどろいた? ごじょーがおしえてくれた、いたずら」
 あのエロ河童。
 ――コロス。
「あ、さんぞっ!」
 小さな体を膝からおろし、足音も荒く部屋をあとにした。