柳は緑 花は紅 (52)
「肉まんっ! あっ、こっちも!」
あちらこちらとちょろちょろしながら、悟空は賑やかな街の通りを歩いていた。
「さんぞっ、両方、食べたい。食べ比べ!」
ふたつの店を見比べてパタパタと三蔵のもとに戻ってきた悟空は、袖を引いて上目遣いに三蔵を見上げた。
意識してやっていることではないだろうが、そんな可愛らしい姿を見ればたいていの人間は首を縦に振るだろう。だが。
「却下」
あっさりと三蔵は無視する。
「えーっ、いいじゃん。滅多に街まで来ないんだし、記念に!」
「なんの記念だ」
「三蔵と一緒に街に出てきました記念?」
言いつつ、自分でも腑に落ちない顔で小首をかしげる悟空の頭に、スパーンとハリセンが振り下ろされた。
「わけのわかんねぇ記念を作るんじゃねぇ」
うーと唸りながら、悟空は頭を押さえる。
「それより、ほら、入るぞ」
目的の店にようやく辿りつき、三蔵と悟空はなかに入っていった。歩いてきたのはそうたいした距離ではなかったが、悟空があちこちと寄り道をしたがるので、結構時間はかかっていた。
そこは衣料品を扱う店だった。
先日、少し肌寒くなってきたので冬物を出したのだが、悟空のものは小さくなっていた。
毎日、顔を突き合わせているとわからないものだが、確実に悟空は成長しているらしい。
それはもう岩牢の呪縛に囚われていないという確かな証拠――。
なのだが、当の悟空はそこまで把握しているかどうか。
とにもかくにも新しい冬物が必要となり、こうして三蔵は悟空と買い物にくることになった。
悟空に似合いそうなものを店主に出してもらい、いくつか試着させる。
着るものについて、悟空は特にこだわりはないらしく、おとなしく三蔵が選んだものを着ている。ので、どれを買うかというやり取りには加わらず、呼ばれたときだけ試着をしに三蔵と店主のもとに戻るほかは、なにか面白そうなものはないかと店内を歩きまわっていた。
やがて買うものが決まり、あとでまとめて寺院に届けるよう手配をしたところで、突然、悟空が三蔵を呼んだ。
「三蔵っ」
また食い物か、と三蔵は思うが、ここには衣料品しか置いていないはずである。
ほかになにか小猿の気を惹くものがあったか、と少し訝しげな表情で三蔵は悟空のもとに向かった。
「ほら、これ、面白い!」
悟空が差し出したのは指のところが5つに分かれた靴下だった。
「これなら、三蔵のそれでも履けるね」
悟空は草履を履いた三蔵の足元を指す。
と、店主も近寄ってきた。
「それは、いま流行のものなんですよ。従来のものより歩きやすいし、暖かいということで。よろしければたくさん買っていただいたのでおまけにおつけしますよ」
「ホント? 三蔵の分も?」
「おい……」
勝手に決めるな、と三蔵は言おうとするが。
「いいですよ」
にこにこと笑って店主は答える。
「わーい。お揃いっ」
悟空の明るい声が店内に響いた。