Finders Keepers(3)


 そっと胸元から少し引き離され、自然に唇が触れあった。
 なんか不思議だ。
 ふわふわと心地良い感触。あやされているみたい。そんな記憶なんて、どこにもないはずなのに、そう感じる。
「ん……」
 だけど、唇の間を舌でつつかれ、そのまま口の中に舌が入ってきてびっくりする。
 びっくりしてる間に、舌が触れ合う。
 反射的に奥に引っ込めようとしたら、絡めとられ、そのまま口の中をかき回された。
 変だ。
 口の中なんて、普段は意識しないのに、こんな風に他の人の舌が入り込んでくると、なんか――。
 なんか……ってどう言えばいいんだろう。
 よくわかんないけど、なにか、知らない感覚が、体の奥の方から生まれてくるような感じがする。
「せん……せ……」
 唇が離れていくと、体から力が抜けて、先生の方にもたれかかった。
 腕に力を入れて、体を支えようとするけれど、うまくできない。
 体が震えている。
 でも、寒いわけではなく。
 むしろ、熱くて――。
「キスだけでその状態か?」
 笑いを含んだ声が上から聞こえる。
「……先生」
 自分でも情けない、と思える声が出る。
 だって。
 なんだか、わかんない。
 こんなのは、どうしたら良いのかわからない……。
「泣くな。大丈夫だから」
 優しくキスされる。啄ばまれているみたいに。
 だけど、すぐにまた、舌が入り込んできて。
 さらに力が抜けて、このまま崩れ落ちてしまいそうになって、怖くなって先生の腕にしがみついた。
「いい子だ」
 耳元で声がする。
 低い、直接、耳に吹き込まれる声。
 ピクンと肩が跳ね上がり、その途端、柔らかく耳たぶを噛まれて、思わず体が竦んだ。
 痛かったわけじゃない。
 だけど、背中を、なにか電流みたいのが走っていって。
 なに、これは――。
 と思っているうちに、横抱きに抱きかかえられた。
「先生」
 ふわりとした浮遊感に、思わず首もとにしがみつく。
 と、頭の上に唇がおりてきたのがわかった。
 なんだろう。
 暖かいものが、胸に溢れてくる。
 嬉しい。
 すごく、嬉しい――。
 そんな風に思って、思わず笑みを浮かべたところ、柔らかいところに下ろされた。
 柔らかい――ベッド?
 確かめる間もなく、見上げる視界いっぱいに先生の綺麗な顔が入ってきた。
「悟空……」
 低い囁き声で、呼ばれる名前。
 普段、授業で聞くのと同じ声なのに、なぜか、このときのは、少し違う気がして。
 それに、名前で呼ばれるのは、嬉しい気がして。
 少し震えた。


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