Finders Keepers(6)


 目を開けると、柔らかな光にとりかこまれていた。
 起き上がって、思い切り伸びをした。
 なんだか、久しぶりによく眠った。
 とても心地よく、安心できて――。
 と考えているうちに、あれ? と思った。
 どこ、ここ――?
 疑問はすぐに解決した。
「起きたのか……?」
 少し眠たげな声が隣から聞こえてきて。
「先生……」
 そうか。
 昨日、先生の家に連れてこられて、それで――。
 思わず赤くなったところを、後ろから抱きしめられた。
「よく眠れたか?」
「うん」
 後ろから抱きかかえられるのって、背中があったかくて気持ちいい。それに、これって、なんか座椅子のかわりみたい。ちょっとおかしくなりつつも、そのまま先生に寄りかかった。
 どうしてだろう。
 こうしていると、凄く安心する。こんな気持ちになったのは初めてだ。
「ね、先生。学校は?」
 まどろむように腕の中に身を任せて、聞いてみる。
 もう朝もだいぶ遅いんじゃないだろうか。差し込む陽射しからすると。
「どうせ行けねぇだろうが」
「俺じゃなくて、先生。先生は、行かなくていいの?」
 そう言いつつも、前に回っている先生の腕に手をかけた。
 離れたくなくて。
 離してほしくなくて。
「……お前、言ってることとやってることが違いすぎ」
 頭上から呆れたような声が降ってくる。
 先生の腕に一瞬力が入った。抱きしめてくれるように。
 でも、徐々に力は抜け、離れていこうとする。
 ――ヤダ。
 先生の腕にかけていた手を強く握った。
「ほらな」
 クスリという笑い声とともにそう言われて、からかわれたことに気づく。
 う〜。
 だって、こんなの初めてだから。
 こんな風に安心して、身を委ねることのできる場所は、初めてだから。
 もう少しだけ。
 そんな我が儘を言ってもいいじゃないか、と思う。
 それに。
 ちらりと視線をあげる。
 先生は嫌な顔してないもの。
 授業中に見せる表情より、ずっとずっと、優しい顔をしてる。
 そっと、腕に頭を預けたら、ぎゅっと抱きしめてくれた。
 嬉しい。
 それはとっても嬉しい――。
「メシは?」
 しばらくして、背中にのしかかるようにして、先生が聞いてきた。
 その言葉に、お腹がきゅー、と鳴った。
「食うか?」
 うー、うー、うー。
 お腹はすいてるけど、先生の手は離したくない。
「可愛いヤツ」
 頭のなかで堂々巡りをしていたら、また笑い声が聞こえきた。と、同時に、抱え直された。
「もう少し、このままでいてやるよ」
 もう少し。
 今だけは――。