The Apple of the Eye (4)
むちゃくちゃっ! 痛かったんですけど。
ソファーに突っ伏したまま、動けない。Hって、気持ち良いものじゃないのか?
いや、さ。途中まではスゴク気持ち良かったけど。
「お前、初めてだったのか?」
ソファーの肘掛に腰をおろした金髪さんが、煙草をふかしながらこちらを見下ろした。
「言っとくけど、こういうこと、ウリにしてるわけじゃないから」
ムッとして言い返す。
よく『可愛い』などと言われるのだ。冗談めかしたのもいれると、かなりの数、言われ続けている。中にはアブないオヤジとかもいて、やろうと思えば公園で夜明かししなくても、ふかふかのベッドで寝れることも知ってる。でも。
「あんたこそ、いつもこんなに簡単に見ず知らずの人間を家にあげて、シちゃうの? それってアブなくねぇ?」
精一杯、気分を悪くさせようと思って言ったのに、金髪さんは気にした風もなかった。
「安心しろ。会ったばかりでこんなことをしたのは、お前が初めてだ」
初めて?
「なんで?」
「何が『なんで』だ?」
「なんで、俺とその……。俺がそういうの、してそうに見えた? だから、いきなりこういうことしても大丈夫だと思った?」
「バカ」
くしゃりと髪の毛をかき混ぜられた。乱暴な手つきだったけどなぜか優しく感じられた。
「じゃあ、なんで?」
「したかったから」
……また、それかよ。
そう思っていたら、立ち上がった金髪さんにいきなり抱きかかえられた。
「何?」
「風呂」
「さっき、入ったけど」
「ナカで出しちまったからな。後始末しとかないと、ツライみたいだぞ?」
「へ?」
言われたことの意味がわからない。疑問符が頭の中を巡るなか、金髪さんはさっさと浴室に向かう。
「ねぇ」
その肩に手をかけて、綺麗な顔を見上げて言う。
「俺は悟空。あなたの名前、教えて」
微かな笑みが綺麗な顔に浮かんだ。
「三蔵」
三蔵。
三蔵か。
そっと首に手を回して、その胸に顔を埋めた。