Little Ordinaries (7)
予定よりも早く家についた。
一週間の合宿夏期講習を終えて、帰ってきたところ。久しぶりに見上げるマンションに、なんだかほっとした気持ちが沸いてきた。
ここが『家』なんだな、と実感する。
三蔵、どうしてたんだろう。
合宿前日。明日は早いからとかアトはつけないでねとか言っておいたのに、結局……えっと、いろいろイタシてくれて。翌日、寝坊
して、プンプンと怒って飛び出した。
それから、電話もメールもしていない。
怒ってたのもあるけど、特に電話は声を聞くと会いたくなるから。
一週間、よく我慢したよな。そう思いつつ、マンションの部屋の扉の鍵を開けた。
足音を忍ばせてリビングに向かう。驚かせてやろうと思ったのに、三蔵の姿はなかった。
あれ?
部屋中を見て回る。でも、三蔵はどこにもいなかった。
なんだか気が抜けた。
待ってると思ったのに。それは自分の勝手な想像で。
馬鹿みたいだ。そう思っていたら、玄関の扉が開く音がした。
三蔵だ。一目散に玄関に向かった。
「さんぞ……」
声をかけようとして途中で止まる。そこにいたのは、三蔵と、花束を抱えた八戒。三蔵はいつもように無表情だったけど、八戒はなんだか楽しそうに笑っていた。
そうか。
三蔵は、別に俺がいなくても大丈夫なんだ。
「あれ? 悟空、もう帰ってたんですか?」
八戒が俺に気付いて声をかけてきた。
「あ、うん。ナタクん家の車で近所まで送ってもらったから」
「そうですか。じゃあ、はい、これ。あ、悟浄、それはここに」
八戒は俺に花を渡すと振り返った。悟浄が顔を出して、何やら荷物を玄関先にと置いた。
「ったく、人使いが荒いなぁ」
「たまには人のためになるようなことをしなくては、ね。それじゃあ、僕たちはこれで」
「え? 八戒? 悟浄?」
止める間もなく、二人は手を振って扉の向こうにと消える。
「三蔵?」
わけがわからなくて三蔵を見上げた。三蔵は少し困ったような顔をしていた。
「もう少し遅く帰ってくると思っていたんだが」
三蔵は悟浄が置いていった荷物を持ち上げた。
「どうせ、合宿のメシなんてそんなにたいしたモンじゃないだろうし、ハラすかせて帰ってくるだろうと思って八戒に頼んでおいた。外食よりそっちの方がいいだろう」
って、俺のために……?
「三蔵っ!」
嬉しくなって、三蔵の腕に飛びついた。