Little Ordinaries (12)
「三蔵、どこまで行くの?」
日が落ちきって、辺りが徐々に闇に包まれていくなか、三蔵の後を追ってお寺の墓地を歩いていた。
「怖いか?」
三蔵が振り返って訊いてくる。
「別に。三蔵が一緒だから」
そう言ったら、三蔵が微かに笑みを浮かべた。だけど、先ほどの質問の答えはない。三蔵は、そのまま何も言わずにまた前を向いて足を進めていく。
が、程なく一際立派な墓石の前で足を止めた。じっと見つめて、動かない。
まるで語りかけているみたい。邪魔するのも気が引けて、黙って横に立っていた。
「悟空」
しばらくして名前を呼ばれた。そして、前に押し出されるように肩を掴まれて後ろから軽く押された。
「三蔵?」
「俺の父の墓だ」
何がしたいんだろうと思って振り返ったが、三蔵の言葉に改めて墓石に向き直った。
「といっても、養父――育ての親だが」
ふわりと後ろから抱きしめられる。
「さん……」
「少し黙ってろ」
うなじに三蔵の唇が触れる。
三蔵は自分の生い立ちを話すのは好きじゃないらしく、お父さんについてもほとんど聞かされてなかった。そんなの望んでなかったのに、遺産を相続させた人。それくらい。でも、三蔵がお父さんのことを大好きだったのは、なんとなくわかる。
墓石の前で言われた通りじっとしていたが、やがて三蔵は離れていった。
それから。
「行くぞ」
そう言って、あっさりと踵を返した。
「三蔵、ちゃんとお参りしなくていいの? ってより、言ってくれたらちゃんとお線香もお花も別に用意したのに」
ここに来る前に金蝉のお墓参りを済ませてきたのだ。
「いいんだ。今日はお前を見せたかっただけだから」
その言葉に墓石を振り返る。
――三蔵は、ちゃんと俺が幸せにするから。
まるでその人がそこにいるかのように感じられて、心の中で呟いた。
と、不意に柔らかな風が吹いた。頬を軽く撫でていく。
よろしくお願いしますね。
そう言われた気がした。
「三蔵、待って」
なんだか暖かな気持ちになって、三蔵の後を追った。