Little Ordinaries (16)


ナタクに引っ張られて、順位表の張り出されている廊下に行った。

「あれー?ホントだ」

上位二十人の名前が科目ごとと総合で載っている、この間のテストの順位表。
その中に、何故か俺の名前があった。

「……って、なんかもっとこう、喜ぶとか驚くとかないのか?」

ナタクが呆れたかのように言う。

「驚いてるけど、なんつーか、実感がない」

今まで、中の上くらいだったもんな、成績。ここに名前が張り出されるなんて考えてもみなかった。なんか冗談みたく思える。

「新しいカンニング法でもみつけたか?」

後ろを笑いながら集団が通りすぎていった。
思わずムッとしたが、ナタクに腕を掴まれて止められた。

タチの悪い連中。どこにでもいる、嫌な奴ら。
物心ついたときからそういった連中と角突き合わせてきたけど、そのたびに嫌な気持ちになるのに慣れるわけでは決してない。

「気にすんな。お前、夏休みの後、日焼けとかしてて遊んでたように見えるし、バイトもしてるのに、成績上がってるからやっかんでるんだよ」

あぁ。夏休みね。結局、海には二回連れてってもらったし、その他にも遊びに連れてってくれたから、日焼けはしたよな。確かに、新学期が始まった時、一人だけ浮いてた。
でも、遊んでばかりいたわけじゃないぞ。
夏休みに限らず、結構、勉強してると思う。三蔵、家にいるときは、ほとんどつきっきりで勉強を見てくれるから。でも、間違えるとポコポコ、頭を叩いてくるんだよな。あれ、逆に馬鹿になるんじゃないかと――。

「あぁ、そうか」

そのおかげかと今更ながらに気付く。
俺一人だったら、気が散ったり、飽きちゃったりするだろうけど、頭を叩いたり、遊びで釣ったり。結構、三蔵がうまく集中力を持続させてくれてるんだ。

「今夜はご馳走だな」

思わず呟いた。

「お祝いか?」
「いや、お礼」

ナタクがちょっと目を細めた。

「お前、変わったよな」
「そう?」
「前はもうちょっとピリピリしたところがあったけど」

そこで、ナタクはにっこりと笑った。

「今のがずっといい」
「ありがと」

やっぱり今夜はご馳走。三蔵の好きなものを沢山作ろう。
いろいろな感謝の気持ちを込めて――。