Little Ordinaries (18)


呼び鈴の音がしたので、パタパタと玄関に向かった。

「……あれ? 三蔵?」

扉を開くと両手に大きな箱を持った三蔵がいた。予想外でちょっとびっくりする。

「誰だと思ったんだ?」

なんだか不機嫌そう。目で促されて、三蔵が中に入れるよう大きく扉を開く。
ズカズカと入ってきた三蔵が乱暴に箱を玄関に降した。
その動作に、箱の中身は三蔵が月に一度してる『お仕事』だとわかった。ので、ため息をつきそうになる。
コレがくると二、三日は閉じこもりっきりになっちゃうから。
と、また呼び鈴の音がした。

「Trick or treat!」

開けると、大きな子供達の声が聞こえてきた。

「いらっしゃい」

思い思いの仮装をし、はしゃいで笑う子供達にお菓子を渡していく。
それから、お礼をいって、次の家へと駆けていく子供たちに手を振って扉を閉めた。

「……ハロウィンか」

振り返ると、ちょっと呆然としたような三蔵の顔が目に入った。

「そ。子供達が回るから、よろしければお菓子をあげてくださいって。勝手にOKしちゃったけど、三蔵、こういうの嫌いだった?」

クスッと三蔵が笑った。

「いや、面倒なだけだ」

それから手が伸びてきて、引き寄せられた。

「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ、か……」

柔らかく抱きしめられる。笑ってくれたのが嬉しくて、ほわほわした気持ちになって、三蔵に寄りかかるように身を委ねる。
だけど。

「ちょっ……! さんぞっ! どこ、触って――!」

その手がなんかヤバイところに触れてきたので、慌てて身を引き離そうとした。といっても、もう既に腕の中に押さえ込まれていて、身動きすらままならない。

「やだって、こんなとこでいきなり――」

それでも、腕を突っ張って三蔵を押しのけようとしていたら、耳元に唇を寄せられた。

「イタズラ、してもいいだろ?」

三蔵の言葉に、一瞬で顔が赤くなったのが自分でもわかった。

――違うっ! それは断じて違うっ!

そう叫ぼうとしたところ、三蔵に唇を塞がれる。

もう、何でこんなことになるんだか。
頭の片隅で思うけど、優しいキスに蕩かされて、やがてなにもわからなくなった。