Little Ordinaries (20)


「ね、怒ってる?」
先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返った廊下。並んで歩く三蔵の横顔を見上げて問いかけた。
今日は文化祭の一般公開日。クラスの模擬喫茶に突然、三蔵が八戒、悟浄と一緒に現れた。一般の人も入れるよとは言っておいたけど、まさか来るとは思っていなかったのですごく驚いた。

「そんなにヘン?」

三蔵はさっきからなんか機嫌が悪そうで、一言も口をきかない。
足を止めて、廊下の窓に映った自分の姿を確かめる。
確かにヘンだけど、こんなに機嫌が悪くなるほどヘンだろうか。

と、三蔵がため息をついた。
って、ため息をつくほどヒドイ? なんかそれはそれでショックだよな。

「笑えないほどヒドイ?」

スカートの裾を広げてみせる。
クラスの喫茶店は普通のじゃつまらないからと言って、男女の制服を入替えていた。
もう一度、三蔵がため息をついたのが聞こえてきた。

「ヘンじゃないから問題なんだろうが」

それから、ふわりと後ろから抱きしめられた。
って、ココ、学校なんですけど。
文化祭自体は、特別教室のある特別棟でしてるから、こっちの一般棟にはほとんど人なんていないだろうけど、でも誰かがいてもおかしくはない。
三蔵に抱きしめてもらうのは凄く好きだけど、こんなところではちょっとヤバ……。

「って、三蔵、何して――」

するりと三蔵の手がスカートの裾から中へと入り込んできた。

「スカートだと楽だな」

しれっとそんなことを言って、内腿を撫であげる。

「やだ、三蔵。駄目だって。制服、皺になる。借り物なんだから。三蔵っ!」

ほとんど懇願するかのような声にようやく三蔵の手が止まった。ほっと力を抜いたところ、いきなり耳の後ろにキスされた。思わず声が漏れそうになる。

「ここでいい」

クスリとどこか満足そうに三蔵は笑うと、さっさと歩き出した。
もともと、帰ると言い出した三蔵を送ってきたのだ。

「遅くなるなら、電話しろ。迎えにいってやるから」

途中で三蔵が振り返って言う。今日は打ち上げがあると言ってあった。

「でも、三蔵、仕事――」
「お前、酒弱いし、フラフラとヘンなとこに行かれたりしたら困るからな」
「なんだよ、それ」

ぷくっと頬を膨らます。だけど。

「来てくれて、ありがと」

そう言うと、三蔵もふっと笑みを浮かべ、それからまた歩き出した。