Little Ordinaries (22)


「悟空」

李厘から貰った写真をそっとパスケースに入れてると、突然、八戒に声をかけられた。

「な、なに?!」

びっくりして声がうわずってしまう。
別に悪いことをしているわけではないから慌てる必要はないんだけど。

いや、でも、悪いことなのかな。
だって、貰った写真は隠し撮りだ。
本人の許可なく写されたもの。

でも、俺と三蔵が二人一緒に写っている写真って持ってないから。
どうしても欲しかった。

「大丈夫ですか? 疲れました?」

ぐるぐるいろんなことを考えていて、はっと気がつくと八戒が心配そうにこちらを覗きこんでいた。

「大丈夫。もうちょっと待ってて。着替えてきたら校内を案内するから」

今日は文化祭。
三蔵は先に帰っちゃったけど、八戒と悟浄はまだいられると言ってくれたので、一緒に回ることにした。

「わかりました。でもその前に」

八戒がポケットから絆創膏を取り出した。

「ちょっと貼っておいた方がいいかもしれませんね」

え? なに?
俺、どっか切ったりしてた?
全然自覚がなくて、手とか肘とか思いつくところを見てみる。

「違うよ、ココ」

と、クスッという笑い声とともに、悟浄に耳の後ろを撫でられた。

「っ!」

びっくりして、そこを押さえて飛び退る。

「さっきまでなかったのに、な。三蔵サマと何をしてたわけ?」

ニヤニヤ笑う悟浄の言葉に、一気に頭に血が上った。
思い当たることもあって。

う〜。三蔵っ!

別れ際にそこにキスされた。アトはそのときのものだろう。
この二人は俺たちの関係を知っているけど――知っているどころか、目の前で三蔵にキスされたこともあるけど。
でも、だからといって、こういうのが見つかって恥ずかしくないわけではない。

「き、着替えてくるっ!」

とりあえずその場を逃げ出した。

三蔵のバカッ!

と怒る気持ちはあるけれど、でも、ほんのちょっとだけ嬉しくなってしまう。
だって、それはほんの少しかもしれないけど、執着してくれているということだから。
だから、なんとなく緩む頬を抑えられなった。