Little Ordinaries (25)
横に滑り込んでくる気配がした。
「ん……」
目を開けようとして叶わず、とりあえずそちらに身を寄せる。柔らかく抱きしめられて胸の中におさまる。三蔵の匂いがした。
「……ん、ぞ……」
「起きなくていい。寝てろ」
耳元で囁かれる。でも。
「プレゼント……」
「ん?」
「プレゼント、何がいい……?」
目を開けようと格闘した後で、三蔵を見上げた。三蔵は眉間に皺を寄せ、何を言われたのかよくわからないという表情を浮かべていた。
「明日……ううん、もう今日だね、誕生日、三蔵の」
そう言ったら、驚きの表情を浮かべた。
忘れてたな。これは、きっと完全に。
いつもなら忙しいのも長くて四、五日でそんなに続かないし、立て続けにくることもないんだけど、『お仕事』でもう二週間近くずっと三蔵は忙しいままだった。
おかげで構ってもらえないし、話もろくにできないし、ずっと淋しい思いをしてた。
誕生日くらいは休んでくれないかなって思ってたんだけど。
この分だと無理かな。ちぇ。
仕方ないんで、甘えられるときに甘えておこうと、胸に顔を埋めた。
「……プレゼント、くれるのか?」
「うん。あんまり高いものは無理だと思うけど」
「それなら大丈夫だ。元手、かかんねぇしな」
「は?」
意味がわかんなくて、顔をあげた。
「こういう状況でプレゼントっつったら、ひとつしかないだろ。鈍いな」
「へ?」
よくわかんないまま腕を掴まれて体勢を変えられ、組み敷かれた。
「えぇ?!ちょ、ちょっと待って……」
三蔵が上に圧し掛かってくる。ようやく意味がわかって眠気も吹き飛び、三蔵の肩を掴んで押しとどめる。
「待てねぇよ。久しぶりなんだからな」
三蔵の手があらぬところに伸びてくる。
三蔵が久しぶりっていうなら、俺だって同じことで。
触れられだけで、どうにかなってしまいそうになる。
でも。
意思の力を総動員させて問いかける。
「三蔵、プレゼント、そんなんでいいの?」
「それがいいんだ」
三蔵の唇が下りてきた。
大丈夫かなぁ。なんだか不安で一杯になりながら、三蔵の背中を見送った。