Little Ordinaries (28)


「なぁ、悟空、朋茗と旬麗と、二股かけてるってホント?」
「な……っ!」

学校の休み時間。あんパンを食べながら、ナタクとしゃべっていたら、いきなり人聞きの悪いことを言われて、驚きのあまりパンを喉に詰まらせた。慌てて牛乳で飲み下す。

「大丈夫か?」

李厘が小首を傾げて聞いてくる。

「大丈夫のわけないだろっ! いきなり何だよ」
「いやぁ、なんか噂になってるから。例の文化祭からちょっと経って落ち着いてたみたいだけど、クリスマスが近いからまた告白してくるヤツが増えてるだろ? 男女問わず。それをことごとく振ってるクセに朋茗と旬麗からのプレゼントは受け取ったって。しかも、食いモンじゃないっていうじゃないか。お前、食い物以外は基本的に受け取らないから」
「あー、それね」

ポケットから包みを取り出す。

「携帯のストラップを作ってもらったんだよ。この間の文化祭で綺麗だなって思って買ったやつのお揃い。作ったのが、朋茗で。頼みにいったら、ビーズはあるけどこの猫の飾りはこの間の文化祭の時に全部使っちゃったからないって言われてね。でも、それを聞いた旬麗がそれならいろいろ持ってるから選んでって言ってくれたんだ。で、できたのが、これ」

包みから携帯ストラップを取り出す。見本にと渡した文化祭で買ったやつと、それとお揃いで作って貰ったやつと。

「綺麗だろ」

買ったのは紫色を基調にしたので、作ってもらったのは金色を基調にしたもの。
どっちも綺麗で、見てると自然に笑みが浮かんでくる。

「綺麗っていうか……。お揃い?」

ナタクがちょっと考え込んこむかのように、眉を寄せる。

「そ。なんか手作りのストラップが気にくわないみたいで。他の人に言われるまで気づかなかったくせに」

怒ってないって言ってたけど。でも気に入らないって顔してた。
だから、お揃いのを作ってもらった。お揃いにすれば、気に入らないってのもなくなるだろうから。
絶対つけてもらうんだ。こんな可愛い猫がついてるのは嫌だって言ってもね。
そのときの三蔵の顔が目に浮かぶようで、思わず笑い声が漏れる。

「それはそれでまたちょっとした騒ぎになりそうだな」
「え? なんで?」

ナタクの言葉に、意識が想像の世界から現実に帰ってくる。
というか、ナタクは三蔵のことを知らないはずだけど、騒ぎって――?
頭に浮かんだ疑問は李厘が解いてくれた。

「そりゃ、そうだろ。お揃いのストラップだぞ。誰に渡すか、学校中が興味津々だろう」
「あ、なんだ。そっちか」

クスリと笑う。

「それはナイショ、ということで」

そう答えると、なんだかナタクも李厘も呆れたような顔をしつつも、それ以上は追及してこなかった。

でも。

悟空には付き合っている人がいて、その人はお揃いの携帯ストラップをしている。

そんな噂が校内を駆け巡り、その携帯ストラップを探せってのが、一時、校内で流行ったそうだ。
全然知らなかったけど。
果てはニセモノのストラップまで出てくる始末だったそうだから、なんかスゴイ。
ゲームとしては面白いかもしれないけど、でも、暇だよなってちょっと呆れた。
だいたい校内にはいないのに、ね。