Little Ordinaries (32)


泣いている。
身を振り絞るようにして泣き叫んでいる。
「泣かないで」
こんな風に泣かせるつもりはなかったのに。
苦しませるつもりはなかったのに。
「お願い、泣かないで」
声は届かない。

きっと、俺がいなければ――。

白いものが落ちてくる。
雪。
冷たい、雪。
全てが白く塗りつぶされる。白い闇。何も見えなくなる。
でも、むせび泣く声は止まず、ずっと聞こえている。
「泣かないで」
もう二度と会いには来ないから。
だから。
「泣かないで」

「――泣いているのはお前の方だろうが」

突然、力強い手に引き上げられた。
辺りに光が満ちる。
「さん……ぞ?」
なんだか王子さまみたいな格好をしてて驚く。
なんだろ。俺の中でのイメージがそうなんだろうか。
不思議に思うけど、ふわっと心が暖かくなった。
そして、大丈夫だと思った。
いつか離れるときが来ても、こうして夢で会えるなら。
こうして夢で助けてくれるなら。

離れても、きっと大丈夫。

別れは、いつか必ずやってくる。
いつか――。