Little Ordinaries (33)
なんだか無性に喉が渇いている。
目が覚めると同時にそう思った。
起きようとするけど頭が重いし、目が腫れぼったくてうまく開けられない。
「大丈夫か?」
声が降ってきた。
「……水……」
呟くと、隣でベッドからするりと降りる気配がした。
「ほら」
しばらくすると、ペットボトルを手渡された。受け取って、キャップを開けようとするけど、なんか力が入らない。
と、ペットボトルを取り上げられた。キュッとキャップが開く音がする。
「ありがと」
言って、もう一度受け取ろうと手を伸ばしたけど、触れたのは手ではなく――。
「んっ!」
喉を冷たい水が通り過ぎていく。
「さん……」
名前を呼ぼうとして、また唇を塞がれる。
何度かそれを繰り返し――。
「も、いい」
何度目かに唇が離れていったときに呟くように告げた。少し息が弾んでしまう。
だって、水を飲ませてくれるためとはいえ、三蔵に触れられれば。
「大丈夫か?」
クスリと笑う声がした。
「食欲あるなら、メシ、作ってやるが」
食欲。
「んー、あまりないけど、でも食う」
「わかった」
カチャッと扉が開く音がした。
「お前、酒強くないんだから、飲むならビールくらいにしておけよ」
扉が閉まる前に、戸口のところから三蔵が声をかけてきた。
その言葉で合点がいく。そうか。だから、なんかダルイのだと。
昨日、見つけたのは何の銘柄かはわかんないけど洋酒で。
ビールよりも眠れるかと思って――。
って、あれ?
何で三蔵がいるんだ?
帰ってくるのは、今日の夜じゃ……。まさか、二日も寝てたなんてことはないよな。
ベッドから出て、キッチンにと向かった。