Little Ordinaries (37)


目が覚めると、いつも隣にいるはずの三蔵の姿はなかった。

あれ? なんで? 昨日は……。
そう考えて、突然、昨日のことが頭に浮かんだ。
そういえば、昨日、無理矢理三蔵ってば。八戒と悟浄がいるっていうのにっ!

慌てて飛び起きた。
と、なんかちょっとダブついている感じがした。
三蔵のパジャマだ。
着替えさせてくれたんだろうか。ついでに後始末も。
それは嬉しいけど、でも、あの二人の知っているところでやったんじゃないだろうな。そういうの、全然気にしないから。そうでないといいんだけど。

考えると、頬に熱が宿る。
でも、いつまでもここにいるわけにいかないし、意を決してドアを開ける。

と、微かに良い匂いが漂っていた。
キッチンからだ。
誘われるようにキッチンに向かう。

「おはようございます。勝手にキッチン借りてますね」

そこには朝の風景に相応しく、爽やかな笑顔を浮かべる八戒がいた。

「おはよ。ごめん、朝ご飯……」
「いいえ。泊めていただいたんですから、これくらい。それより勝手に冷蔵庫の中、漁っちゃいましたけど」
「いいよ、別に」

八戒の方に近づく。

「カニ雑炊?」
「えぇ。昨日の残りですけどね」

昨日、八戒と悟浄がカニを持ってきてくれた。それでそのまま飲み会に雪崩込んで。
そういえば三蔵と悟浄は?
ふっとダイニングに視線を移すと、テーブルにつっぷしてる悟浄と平然と新聞を読んでる三蔵が目に入った。

「悟浄、ほら、どいて。お皿並べますから」

情け容赦なく八戒が追いたてる。

「悟空、もうご飯できますから、着替えてきてはどうです?」
「うん」

返事をして出ていこうとし、もう一度振り返った。

「何だ?」

三蔵が視線をあげて問いかけてくる。

「何でもない」

へへっと笑う。

「なんか『家族』みたいだなって」

家族揃ってのお正月の朝みたい。
何だか温かいものが胸に込み上げて、独りでに笑いながら自分の部屋に向かった。