Little Ordinaries (47)


「ただいま。ごめん、すぐにご飯の用意するから」

帰るなりバタバタとキッチンに駆け込んだ。

「遅かったな」
「八戒のトコに寄ってたから」

リビングから声をかけてきた三蔵に答え、テーブルの上に荷物を置いて、とりあえず手を洗う。

「無理してメシの用意をすることないぞ。どこかに食べに行ってもいいし」
「大丈夫。今日は八戒がいろいろ持たせてくれたから」

袋の中からタッパを取り出す。

「明日の分も作ってもらっちゃった。ね、今日は和食と洋食とどっちがいい?」
「どっちでも」
「ん〜。じゃ、和食」
ってことは、こっちのは冷蔵庫。でもって、これも。
別の袋にいれておいたものも一緒に持って冷蔵庫の扉を開けて。
そのまま、固まったように動きが止まってしまう。見知らぬものを目にとめて。

もちろん、冷蔵庫の中に入ってるものの全部が全部、俺が入れたものじゃない。
だから別に見知らぬものが入ってたって不思議じゃない。

だけど。

白い箱。ケーキが入っているんじゃないかなっていう白い箱。
どこにもロゴなんか入ってなくて、お店で買ってきたものじゃなさそうで。

手作り――?

「お前、冷蔵庫、開けっ放しでどうした?」

三蔵の声に、突然我に返った。

「あ、ううん。何でもない」

手に持っていたものを中に入れようとして、でも、動揺していたのか、床へと落としてしまう。
袋から飛び出した包みが床を滑り――。
キッチンに入ってこようとした三蔵の足にぶつかって止まった。
慌てて拾おうとするが、三蔵の手の方が早い。

「何、泣きそうな顔をして――あぁ、それか」

開けっ放しの冷蔵庫の中が見えたのだろう。三蔵が軽くため息をついた。

「言っておくが、俺宛てじゃねぇよ。お前にだ。ババァからな」

ババァって……。三蔵のおばさん? 俺に? 何で?

「で、これはお前から俺にか?」

頭の中を疑問符が渦巻いていて、三蔵の質問は伝わったけど、頷くことしかできない。

「安心しろ。これ以外は受け取らねぇよ」

その言葉とともにくしゃりと髪をかきまぜられた。
その手はとても優しくて。見上げて目に入った笑みもとても優しくて。

「三蔵……」

なんだか胸が熱くなった。
(→おまけ)
※パスワード要
(別館案内をご覧ください)