Don't You Want Me Any More? (10)


暗い部屋。
誰も待っていない、暗い部屋。

家へと辿りついたけど、出迎えたのは冷え冷えとした空気だけ。
空虚な冷たさだけ。

そのまま部屋の真ん中に座りこんだ。

どうして、三蔵。
抱きしめてくれたのは、つい今朝のこと。
それなのに、どうして――?

いつかは離れなければならない時がくると思っていた。
だけど。

だけど、本当は、覚悟なんてできてなかった。

離れるなんて、できない。
できるはずがない――。


優しく抱きしめてくれたのに。
だから、大丈夫だと思ったのに。
知らされていないことは、知る必要がないのだと思ったのに。

知らされていないことは――。

そう。
このことは全部、三蔵から聞かされたことではない。

手の中にずっと握りしめている携帯を見下ろす。

聞けば、きっと教えてくれる。
あの女性は誰なの、と聞けば。
何でもないと言われるかもしれない。ただの知り合いだと。

だけど、もし。

だけど、もし、三蔵にとって大事な女性だとしたら。
一番大切な人だとしたら。


怖い。

聞くのは怖い。


このまま。
このまま、知らない振りをしていれば、一緒にいられるだろうか。

ずっと、一緒にいられるのだろうか。

何も見なかったことにすれば。
何も聞かなかったことにすれば。

何も。
何もなかったのだ。


何も――。