Don't You Want Me Any More? (11)


電話が鳴っていた。
携帯ではなく、家の電話。
その音に辺りを見回すと、いつの間にか、朝になっていた。
電話の音。
鳴り止まない電話の音。
誰、だろう。
ナタクだろうか。三蔵だろうか。
どちらにしても、出なくちゃ。

何もなかったのだ。何も。

だから、心配をかけるわけにはいかない。

「もしもし」

受話器をとって応答する。
少し掠れてる声が出る。
でも、大丈夫。
普通に話せる。
聞こえないように深呼吸して、大丈夫、と心の中で繰り返す。

「悟空か?」

だけど聞こえてきたのは、予想とは違う思いもかけぬ声。

「焔」

驚く。
なんで、焔が?

「驚いたか? 昨日から携帯にかけてたんだけど、お前、電源切ってたろ? 全然繋がらないから、こっちにかけてみた」
「昨日、ライブ……に行ってた、から。そのまま切ってた。それより焔、どうして? それになんでこの番号」

自宅の電話番号は教えてなかったはず。
三蔵が嫌がるから。
「いろいろとツテがあってな。それより喜べ、悟空。4月から日本での勤務に戻ることになったぞ」
「喜べ、って……」

あまりにも焔らしい言い草にちょっと呆れる。
呆れて……少し、気持ちが浮上する。

「って、今、日本なの? 焔」
「昨日、帰国した。それで電話してたんだけどな」
「そうか」

少し沈黙する。

「どうした、悟空? なんか元気がないみたいだが。あいつに何かされたか?」

せっかく少し浮上したのに、ツキンと胸が痛んだ。

「ね、焔……」
「なんだ?」
「焔は、さ。俺も金蝉もどっちも好きだって言ったよね。どっちも同じくらい好きだって。あれは本当なの? 本当にそんなことができるの?」

沈黙が返ってきた。