Don't You Want Me Any More? (12)


マンションの近くの公園で待っていると、焔がやってきた。
ヘンな質問をしたせいだろうか。どうしても会う、と言われた。
といっても、焔は三蔵とは犬猿の仲だから、いくら三蔵がいないからといっても家に呼ぶのは憚れたし、どこかの喫茶店で、というのは俺が嫌だった。
だって、ヒドイ顔をしてると思うから。

焔に、最後に会ったのは去年の5月くらいだから、ほぼ1年ぶりの再会だ。
だけど、あんまり変わっていないようだった。
そばにくるなり、抱きついてこようとするのを阻止しながら思う。
姿も、過剰なスキンシップをとりたがるところも。
最後に会ったときから、というより、最初に会ったときからあんまり変わってないんじゃないかと思う。

「元気そうだな、といいたいところだが」

警戒している俺を慮ってか、一歩離れたところからこちらを見ながら焔が言う。

「あいつに泣かされたのか? 目が腫れてる」

その言葉に、ふいっと視線をそらした。

だからやめとけと言ったんだ。
次に続く言葉は、たぶんそんなのだと思った。だけど。

「そのことにはあんまり触れてほしくない、か? お前がそう思うなら、それも仕方ないが……」

あっさりと焔が引き下がったのでびっくりした。
思わず、そらした視線を戻す。

「だが、どんなときでも、俺がいるのは忘れるな。いつでも、お前の幸せを願ってる」
「焔……」

驚く。
本当に驚いて、焔を見つめる。

互い違いの色をした瞳に浮かぶ優しい色。

そういえば、いつでも焔はこういう瞳で俺を見ていたことを思い出した。
それは嘘偽りのない優しさ。

「悟空、さっきの質問の答えだが」

不意に焔が言い出して、ちょっと息をつめた。
さっきの質問。同時に二人を好きになれるか。

「俺の気持ちは本当だ。今でも、お前も金蝉もどちらも同じくらい好きだと思う」
「……そんなことができるの?」
「できる」

きっぱりと言い切った焔の答えに思う。
三蔵もそうなのか、と。
あの女性と、俺と。
両方とも――?

「俺は、な。俺にはできるが、それは人にもよるだろう。あいつは――」

ふっと焔の視線が遠くを見るようになった。

「いいタイミング」

呟く焔の視線を追ったその先に。
三蔵がいた。