Don't You Want Me Any More? (15)


トントン、と病室の扉が控えめにノックされて開いた。

「悟空……」

入ってきたのは、気遣わしげな表情の八戒と悟浄。

「はっか……ご……じょ……」

その姿が目に入った途端、涙が溢れてきた。

「大丈夫ですよ、悟空」
「そうそう、大丈夫だよ、小猿ちゃん」

突然、泣き出したというのに、二人は迷惑そうな顔もせず、八戒がしっかりと抱きしめてくれて、悟浄がくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
ひとしきり泣いて落ち着くと、八戒がかがんで、涙をハンカチで拭いてくれた。

「三蔵の怪我はたいしたことないと、先ほど病院の先生に聞きましたよ」

そばで寝ている三蔵を慮ってのことだろう。小さな声の言葉に、頷いた。

事故にあったのだ、と理解したのは、病院に連れてこられてから。
それまで、わけがわからず、三蔵の方に近づこうとして、「動かさないで」と止められていた。

あの時。
闇雲に駆け出して、周囲のことなど見ていなかった。
車が来ているのにも関わらず、車道に飛び出した俺を三蔵が庇ってくれた。
一歩、間違えたら、自分が死んでたかもしれないのに。
そんな価値なんかないのに。

「それより、悟空。あなたは大丈夫ですか?」
「俺……は、かすり傷……だったから」
「怪我よりも、酷い顔色ですよ。少し、休んだらどうです? 補助のベッドとか、頼めば貸してくれると思いますよ」

八戒の言葉に首を横に振った。

「ここじゃ、落ち着かないから――」

三蔵の方を見る。
金色の髪。大好きだった、金色の髪。

「ね、八戒。頼まれてくれる?」

そっと三蔵の髪を撫でながら、言う。

「朝まで、三蔵についてて。俺は――。俺はちょっと家で休んで、着替えとか持って、また来るから」

振り返ると八戒が少し奇妙な顔をしていた。
こんなときに俺が三蔵の傍から離れると言っているからだろう。だけど、三蔵の怪我は命に関わるようなものではないし、俺がヒドイ顔色をしているのも事実。
やがて、無理矢理自分を納得させたかのようにため息をついて、八戒が言った。

「わかりました。悟浄、送ってあげてくださいね」

病室から出るときに、ドアのところでもう一度振り返った。

三蔵――。