Don't You Want Me Any More? (17)


部屋に入って、身の回りのものを纏めた。
そんなに沢山はいらない。必要最低限でいい。
特に思い入れのあるものなんてない。第一、思い入れのあるものは持ってはいけない。

携帯を机の上に置く。
それから、パスケースから写真を取り出した。
写真。
俺と三蔵が写っている写真。
本当は持っていきたいけど、でも三蔵は嫌だろう。

俺がこんな写真を持っていることなど三蔵は知らないと思うけど、でも、知ったらきっと嫌がる。
もう何も関係のない人間が自分の写真を持っているなんて。
そう思うことを知っているのに、持って行くことはできない。
だから、これは置いてく。

そっと写真の三蔵を指でなぞる。
もう一度、その姿を記憶するように。

それから。
ベッドの上に置かれているうさぎのぬいぐるみ。
一度取り上げて、またベッドの上に戻し、また取り上げる。

これは。
これくらいは、いいよ、な。

ただのぬいぐるみだ。

俺が勝手に三蔵から貰ったもの、と思ってるけど、本当はうさぎ好きのおじさんがくれたもの。
三蔵は自分があげただなんて思っていない。
俺と三蔵を繋ぐものは、この子にはない。
俺が頭の中で思い込んでいることを除けば、まったくない。

だから。だから、いいよな。

ぎゅっとうさぎを抱きしめる。

三蔵。
この子を抱きしめるとき、いつも三蔵のことを考えていた。
それは、たぶん、これからも変わらない。

それだけは、許してほしい。
想うことだけは。


もう二度と会わないから。
もう――。