Don't You Want Me Any More? (21)


あなたのせいよ。

言われた言葉が蘇る。

あなたのその金の目は、不幸を呼ぶ。周りの人を不幸にする。

「だから一緒にはいられない。ごめん。本当は最初から一緒にいるべきじゃなかった……」

震えを止めようと、うさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて顔を埋めた。
と、腕をとられ、片手を頬に当てられて顔を上げさせられた。

「一体、何の話をしている? 不幸を呼ぶ?」

眉間に皺を寄せた三蔵の顔が目に入る。
じっと目を見ているのがわかる。

「そう、不幸を呼ぶんだよ、この金色の目は」

目を伏せる。
見て欲しくない。

この目を。

「周りの人を不幸にする。だから本当は、俺は誰とも一緒にいちゃいけない。ひとりで――ひとりでいなくちゃ……」
「ひとりでなど、いられるわけないだろ」

掴まれた腕を引かれる。

「淋しい、とこんなにも訴えているのに」

また腕の中に閉じ込められる。

「お前の目が不幸呼ぶなんて、そんなくだらないこと、誰に言われた? そんなことをずっと思っていたのか? だからずっと一緒にいると言っても、いつでも不安そうだったのか? 誰だ? 一体、誰がそんなことを」

青ざめて、震えて、怯えて、泣いていた、綺麗な女性。
ただ会ってみたかっただけだったのに。
あんな風に泣かすつもりなどなかったのに。

「母さん……」

無意識のうちに呟いた言葉に三蔵が不思議そうな声をあげた。

「母さんって。お前、両親の顔も知らないと」

赤ちゃんのときに捨てられたから両親の顔も知らない。三蔵にはそう言ってあった。

「……記録があった。拾われたときに、一応、身元を調べたみたいで。父親は亡くなっていたけど、母親の連絡先が控えてあった。こっそりと見て、会いに行った。別に、何かを期待してたわけではなくて、どんな人なのかと思っただけだったけど……」

雪のちらつく日だった。
家の前に立って、どう切り出そうか迷っていたら、突然、女性が出てきた。

優しそうなその人は、俺が誰とわかると、見てわかるほど激しく動揺した。

「俺の目……。父さんが死んだのは俺の目のせいだって言われた。金の目は不幸を呼ぶから。だからそのせいで父さんは死んだんだって」