Don't You Want Me Any More? (22)


「お前のせいなわけないだろう」

まるで全てから守るかのように、さらに懐近くへと引き込まれた。

「お前の両親の事情は知らない。
だが、お前の母親は、自分の夫の死が受け入れられなかったんだろう。
悲しくて。とても苦しくて。
だから、お前のせいにした。
母親には母親の言い分があるだろう。
だが、だからといってお前がそれを引き受けなきゃならないことはない。
お前が自分のせいだと思う必要はどこにもない」
「俺も……、俺もそう思おうとした。
母さんは悲しくて辛くて、それで全部、俺のせいにしたんだって、そう思おうとした。
でも、金蝉……」

懐かしい面影が脳裏に浮かぶ。
金蝉。
とても優しくしてくれた。
それなのに――。

「俺がそばにいなければ、あんな病気にかかることもなかったかもしれない」

金蝉が倒れたときの絶望。
それは、金蝉の病気のこともあったけど。

この金の目が本当に人を不幸にするのかもしれないと、そう思い知ったから。

「そんなことねぇよ。病気なんてお前がいようがいまいが、関係ねぇだろうが」
「そうかもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない。
ずっと……ずっと心にひっかかってた。
三蔵と一緒にいて幸せで……幸せであればあるだけ、いつか不幸を招くんじゃないかって、トゲみたいに心にひっかかってた。
いつかは離れなきゃいけなくなる日がくるって……そう思ってた」
「だから、そんな言葉に何の根拠もねぇよ」
「でも、怪我……。三蔵のその怪我、俺のせい……」

痛々しいほどの白い包帯。

「お前のせいじゃねぇって言っただろうが。俺が勝手に飛び出したんだ。だいたいこんな怪我、たいしたことねぇよ」

「でも俺がいなければ、こんな怪我することもなかった。それに今回は軽症ですんでも今度は……」
「未来のことなんて、誰にもわからねぇよ。なのに、そんなわけのわからないものに振り回されて、お前は俺から離れようというのか?」
「でも、きっと俺は不幸を招く。だから……」

三蔵の腕から逃れようとした。

だけど。

「離さない、と言っておいたはずだ」

強く抱きしめられた。

「三蔵。でも、俺は、三蔵を不幸にしたくない……!」

抜け出そうともがく。
だがますます強く――身動きもできないほど強く抱きしめられた。
そして、ふいに耳元で三蔵が囁いた。

「不幸って、何だ?」

それは囁き声だったけれど、あまりにも激しい感情に、囁きにしかならなかった。
そんな感じがした。