Don't You Want Me Any More? (23)


「お前は俺を不幸にしたくないから離れると言うが、お前の言う不幸とは何だ? 怪我をすることか? 病気になることか? そんなのは、俺にとって不幸でもなんでもない」

強く、肩を掴まれた。
あとになるのではないかというくらいに強く。

ゆっくりと離されて、まっすぐ三蔵が視線を合わせてくる。

「俺にとって、不幸というのは――悟空、お前がいないことだ」

その言葉に驚く。
ただ驚いて、息を呑んで立ちつくす。

「さん……」
「お前は違うのか? お前は……」

再び抱きしめられた。だけど、先ほどまでのがむしゃらな強さはない。

「お前は俺を不幸にしたくないと言いつつ、俺を不幸にする気なのか。お前を失うこと以上の不幸なんてあるはずがない」

三蔵の体が微かに震えていた。
それを感じ取った途端、何もかもが、世界が、全てが消えたような気がした。

いるのは三蔵だけ。
確かなのは、三蔵だけ。

それだけが、大切――。


「さん……ぞ……」
とめどなく溢れてくる涙に、喉がつかえたように、何も言えなくなる。
大切だと。
ただそう思うだけなのに、それがあまりに強すぎて、言葉に表すことができなくなる。

「さんぞ……」

囁いて三蔵の背中に手を回した。

「三蔵」

その手に力をこめた。

「離さない、と言った。離れていくことは許さないと……」

三蔵の言葉に頷く。
同じように感じてくれているのがすごくわかる。

埋めた胸から、三蔵の心臓の音が聞こえていた。
「――本当は離れるなんてできなかったかもしれない」
その鼓動を聞きながら、呟いた。

「ここにいれば、三蔵が迎えに来てくれるかもしれないって思ってた。三蔵と最初に会ったのが、ここだったから。ここにいれば、また三蔵が来て、家に連れ帰ってくれると思ってた。そんなこと、あるはずないのに、期待してた。だから、ここから動けないでいた。あんなに三蔵の心を乱すようなことを言っておいて……」
「もういい。もう二度と離れないなら、それでいい」

もう一度強く抱きしめられた。

それで、初めて。
三蔵に会ってから初めて、本当にここにいても良いのだと思った。

三蔵の腕の中にいても良いのだと思った。


(→おまけ)
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